(長尾先生は、先日の認知症治療研究会でお見かけした。とてもエネルギッシュな印象の先生でした)特に、初期のレビー小体型認知症においてはうつと間違われやすいと思う。以下に例を挙げる。
55歳男性 レビー小体型認知症
(記録より引用開始)
初診時
最近近医でうつと診断されたが、お子さんが認知症の可能性を考えてインターネットで当方を検索し、連れて来られた。
(既往歴)
左眼の病気?網膜何とか〜、良くわからない。点眼はしている。右目は大丈夫。
(現病歴)
1年前から様子がおかしい。頭が混乱しているようだ。物忘れ、活気のなさ。
本人は首筋あたりのだるさを訴える。確かに混乱している様子あり。
(診察所見)
HDS-R:20
遅延再生:4
立方体模写:×
時計描画:×
保続:なし
取り繕い:なし
病識:あり
迷子:なし
レビースコア:5
rigid:左上肢に軽度
ピックスコア:2
頭部CT左右差:なし
クリクトン尺度:21
介護保険:なし
胃切除:なし
(診断)
ATD:
DLB:〇
FTLD:
MCI:
その他:
頭部CTで有意所見なし。海馬萎縮は年齢からするとやや認めるか。
表情は暗く、手はすぼめている、歩行時に手を振らない、腕組みあり。夜間に暴れる、叫ぶ。REM睡眠行動異常。笑顔を時に見せる。
時計描画は異常で、透視立方体模写も不可。診断はDLBでいいだろう。最近、心療内科にてうつの診断でレクサプロが始まった。これは中止にしてもらい、レビーセットで介入開始とする。イクセロンパッチ4.5mgに、夕食前の抑肝散2.5mg。
4週間後
活気が上がった。活動的になった。動きが素早くなってきた。夜の叫びがなくなった。
著効と考える。抑肝散増量で更に集中を高めよう。イクセロンパッチは4.5mgでしばらく経過をみる。
酪農の仕事が手に付くようになってきた。また、時計描画でかなりの改善を認める。
レビーの問診は本当に大切
以前も書いたが
問診はやはり大切である。
入室時にレビー感を感じていたので、恐らくレビー小体型認知症だろうなと推測しながら、スコアをつけていく。
医者「夜中に寝ているのに、暴れたり大声で叫んだりしませんか?」
家族「・・・!」
医者「動作が鈍くなってきたのは、物忘れ症状と同じ頃ですか?」
本人「・・・!」
医者「薬が効きすぎることがありませんか?」
家族「・・・!」
問診票に書いてあることが全てではなく、聞かれないと答えない本人や家族は多い。「何で分かるんですか!」というようなリアクションがあると、心の中では「ニヤリ」となる。
その他、時計描画が目立って改善してきていることが印象的だった。
家業の酪農が手伝えるようになってきたのも、視界が改善されて混乱がとれてきたからだろうか。
前医では、55歳という年齢から鬱を疑って、抗うつ薬の処方となったのかもしれない。
しかし物忘れが主訴の一つにある場合には、歯車様筋固縮を確かめ、問診を丁寧にとり、時計描画を行ってみることが大事だと、改めて教えてくれた方であった。
今回はこれで終了。