昨今は、様々なことがドパミン報酬系で語られるようになってきた。
負の面では、
などなど。糖質依存は、ドパミン報酬系の論理で説明可能である。
「糖質を摂取」→「美味い!」→「ドパミン放出」→「糖質を摂ると幸せだ」→糖質報酬回路形成
一度このような回路が形成され、それが糖質摂取のたびに繰り返されると、そのうちに慣れてしまってドパミン放出が鈍くなってくる。
「糖質摂取」→「美味いけど・・」→「ドパミンいつもより少なめに放出」→「糖質が足りないからだ!」→「もっと糖質を!」→糖質中毒
このような流れで「中毒性」が培われてく。これは、ニコチンやアルコールにおける中毒形成過程と同じようだ。
また、インスリン抵抗性を持つ人の場合、糖質摂取の際に起きるインスリンの応答性が悪いために、正常者に比べて「報酬獲得」物質であるドーパミンの分泌量が低い、ということもある。(
参考)
加齢とともに罹病率が増加する糖尿病と認知症の合併が注目されている.認知症の二大原因疾患と考えられる血管性認知症 vascular dementia(VD)とアルツハイマー病 Alzheimer disease(AD)のうち,慢性の血管病変を合併する糖尿病においては VD の発症が高頻度であることは従来から良く知られている.一方最近になって集積されてきた疫学調査や臨床研究により,糖尿病において AD の合併が高頻度であることが注目されている.その成因あるいは病態としてメタボリック症候群や軽症糖尿病に認められるインスリン抵抗性と高インスリン血症が中枢神経系の低インスリン状態を惹起し,その結果,脳内へのβアミロイドの蓄積を助長してAD発症に関わる機序が提唱されている.加えて,ADの進行抑制のための新たな治療として,インスリン抵抗性改善薬や脳内へのインスリン移行が顕著な点鼻インスリン療法が効果をあげているとの報告も認められる.(日老医誌 2010;47:385―389より一部抜粋)
このようなことが指摘されるようになってきた。点鼻インスリン療法などは、先日NHKスペシャルでも取り上げられていた。
食は文化であり、報酬系にはメリットもある。必要なのは節度である。
勉強やスポーツに打ち込むことを、「勉強中毒、スポーツ中毒」として否定する人はいないだろう。そして、これらもまた報酬系で説明可能である以上、人のより良いモチベーションの為に報酬系は必要なものと考えることが出来る。
また、食は文化であり、文化の中で人は生活している。
糖質制限を徹底する余り、日本人の食文化である「米食」が完全に否定されるようなことがあっては、それは寂しいことだろう。
結局、大切なのは節度であり、節度を持ってたまには糖質を嗜好品として楽しむ。こういう選択肢があっていいのだと思うのである。糖質が持つ「健康における負の側面」は忘れないように気をつけながら。
※糖質制限におけるルール(重要)
- 血液検査で血清クレアチニンが高値で腎障害がある場合
- 活動性の膵炎がある場合
- 肝硬変の場合
- 長鎖脂肪酸代謝異常症がある場合
これらの場合には、糖質制限は適応とならない。また、経口血糖下行薬の内服やインスリン注射を行っている人は、低血糖のリスクがあるので必ず医師に相談すること。
江部 康二
東洋経済新報社
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