全てがレビー小体型認知症を物語る人
診察室への入室の様子から、座って数分話をした時点で、大方の予測がつく方がいらっしゃる。今回はそんなお一人。
84歳男性 レビー小体型認知症
(当時の記録より引用開始)
初診時
ここ2週間程度で、急激に活気が無くなってきた。
ぼーっとしている。食欲はある。
虫がいると大声で飛び起きておびえる、寝言あり。後ろに転倒しやすい。
HDSR:14
遅延再生:2
立方体模写:×
時計描画:OK
保続:なし
取り繕い:なし
レビースコア:8.5
ピックスコア:3.5
クリクトン尺度:30
rigid:×
(診断)
ATD:
DLB:〇
FTLD:
MCI:
その他:PSP、CBD、ミニLPC
左優位の萎縮。後方転倒があるのでPSPは否定しないでおく。Humming birdなし。次回は眼球運動障害確認も。
イクセロンパッチ、ニコリン、抑肝散開始。
歩行は手を振らず小刻み、視線は合わない、手はすぼめている。
胸部大動脈瘤の手術既往あり。
2週間後
(改善点)
明るくなった。転ばなくなった。
(悪化点)
なし
(禁止薬)なし
歩行も安定し、著明に改善している。
奥さん、娘さんも喜んでいる。特に奥さんは大はしゃぎしている。
食事を引っかけやすく、注意が必要。
今回もニコリン。イクセロンパッチは4.5mgで維持。掻痒感なし。
眼球運動は全方向で動きが鈍い印象。
元々斜視あり?
(引用終了)
入室時の様子、椅子に座った後の様子、話し方、この辺りでほぼ予想の付いた方だった。
予約の物忘れ外来だったので、少し時間に余裕を持って診察出来た。しかし飛び込みの一般外来であれば、長谷川式テストは省略してレビースコアだけにしたかもしれない。
ひょっとしたら、レビースコアすら省略したかもしれない(言い過ぎ)。
それほど典型的な「レビー感」を持つ方であった。
診断より今後が大事なケース
この方で注意すべきなのは、現時点で
この2点。
「将来的にピック化してくるかもしれない」ということを念頭に置いているか否かで、症状に変化が出てきた際の対応が違ってくる。
念頭に置いていないと、最初の診断に引きずられ全てが「レビーの悪化」に見えてしまうかもしれない。
初診時の頭部画像撮影は、「その時点の診断に役立てる」という意味と、「先々の予想を立てておく」という意味、両方を併せ持つ。
今回はこれで終了。