日差しが少しずつ柔らかくなり、冬の名残が路傍に吸い込まれ消えていく頃。 リツ子に加わっていく様々な変化に、涼子は驚きと焦りを感じていた。 「ねぇ、お義母さんまたお味噌買ってきてたよ。これでもう四つ目」 夕食の片付けをしながら、テレビを観ている裕一に声…
昭吉が息を引き取ったのは、冬の終わりだった。 その朝、雲一つない空が広がっていた。庭の蝋梅が黄色い小花をつけ、まだ冷たい風に揺れていた。老いた身体はいつかの夕暮れのように静かで、最期の吐息は、まるでその風に紛れて消えていくようだった。 「よく頑張っ…
引用をストックしました
引用するにはまずログインしてください
引用をストックできませんでした。再度お試しください
限定公開記事のため引用できません。