鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

LP(VP)シャント手術で留置した圧可変式バルブが、裏返しになった場合の対応について。

 シャント手術の後で、皮膚の下に埋め込んだバルブ(体外から髄液の流れ方を調整できる)が裏返しになってしまうことがある。

 

今回は、その対処方法について説明する。

 

☆ボカシをかけてはありますが、手術中の写真が出てきます。苦手な方は回れ右でお願いします<(_ _)>

裏返しになると、何か困るの?

 

あとで圧の調整がしにくくなる。シャント圧の調整方法については、以下の記事をご参考に。

 

www.ninchi-shou.com

 

裏返ってしまっても、髄液が流れてさえいれば問題ない。ただ、細かな圧調整を頻繁に行う必要がある場合には、結構面倒ではある。

 

裏返しになった場合の対処法その①。圧調整の仕方を工夫する。

 

以下の説明は、CHPV(コッドマンハキム圧可変式バルブ)の場合であることをお断りしておく。

 

通常であれば、バルブの上からプログラマーを当てて希望の圧に設定するだけであるが、反転している(裏返しになっている)場合の圧変更手順は以下。

 

  1. まず、プログラマーでバルブ圧を200mmHgに設定する。ただし、これは正確に200mmgになっているわけではない。
  2. その後、例えば圧設定を120mmHgにしたいのであれば、プログラマー設定圧=210-120=90(mmHg)で設定し、圧変更する。

 

このやり方で、調整できる場合が多い。ただし、元々の圧調整範囲が30~200mmHgなので、反転時の最大圧は180mmHgが限度である。

 

  プログラマー設定圧=210-(希望する設定圧)

 

公式です。覚えましょう!

 

裏返しになった場合の対処法②。バルブを入れ替えてしまう。

 

最終手段であるが、皮膚切開してバルブを表に戻すという方法はある。写真は以下。

 

反転したシャントバルブ

 

LPシャント術後1年以上経過した方であったので、バルブは鞘状の組織に厚くくるまれている状態であった。この状態のバルブを見るたびに思い出すのが以下。

 

ブラックジャック メス 鞘

 

名作ブラックジャックの「ときには真珠のように」から。

人体は、異物を包み込んで「体外化」する。

 

この裏返しになったバルブは既に機能していなかったため、新たに交換して接続し直した写真が以下。

 

反転したシャントバルブを再接続した

 

もう二度と反転しないようにバルブと周囲組織を糸で固定して、傷を閉じた。

 

バルブの反転は時に経験することではあるが、入れ替えまで行うことは珍しかったので、今回記事にしてみた次第である。