水頭症の治療で行われる、シャント手術。
シャントシステムを身体に埋め込んだらそれで終わりというわけではなく、その後バルブ圧調整(髄液の流量調整)が必要となる場合がある。
水頭症に対するシャント手術については、下記をご参考に。
特発性正常圧水頭症(iNPH)の診断や検査、手術の流れについて。DESHも踏まえて。 - 鹿児島認知症ブログ
「治った」と言えるであろう、特発性正常圧水頭症(iNPH)の改善例。 - 鹿児島認知症ブログ
どのような時にシャントバルブ圧の変更を行うのか?
シャントシステムを留置した後、流量の再設定を行う必要があるのは、以下の場合。
頭痛がする
これは、「設定圧が低すぎて頭痛が起きているのかもしれない」と考えて、圧を上げる必要がある。
慢性硬膜下血腫を起こしている
これも、圧設定が低すぎた結果、脳が下向きに牽引されているために起きている状態。圧を上げる必要がある。
術後の症状改善具合が今ひとつ
髄液の流れをもう少し良くしてみよう。つまり、圧を下げる。圧を下げた後は、頭痛などの低髄圧症状に注意を。
これら以外で重要なのは、MRIに入った後である。
シャント術後にMRIに入っても大丈夫?
これはよく受ける質問だが、大丈夫である。
ただし、バルブ圧の設定が変わっている可能性があるので、MRI後にレントゲンで確認する必要がある。*1
以下に示すのは、CODMAN HAKIM 圧可変式バルブ シャントシステムのバルブ確認の仕方。
LPシャント手術では、背部皮下に可変式バルブを埋め込んであるので、まず腹部レントゲンで現在の圧設定を確認。
この赤丸部分を拡大すると・・・
このバルブ拡大画像からは、現在の圧設定が30mmHgと判断出来る。どのぐらいの圧設定なのかを確認するには
メーカーが提供している、このようなツールを用いている。これとレントゲン画像を照らし合わせて、何mmHgなのか判断している。
見てお分かりのように 、30~200mmHgまで18段階の圧設定が可能となっている。この「細かい圧調整が出来る」というのが、CODMANのシャントシステムのメリットである。
調整に当たって安全を期すのであれば、10mmHgずつ変更すればよい。自分は20mmHgずつ行うことが多い。圧を変更して具合が悪くなれば、また戻す。圧を下げて頭痛を来すようになれば、念のために頭部CTで慢性硬膜下血腫の有無を確認するようにしている。
実際の圧変更の風景(レントゲン室で行う)
これはHAKIMプログラマーと呼ばれる、圧変更のためのデバイス。これを用いて・・・
このような感じで圧調整を行っている。
ちなみに、CODMAN以外にもシャントシステムは幾つかあり(ストラータ、ポラリスなど)、バルブも固定圧と圧可変式に分かれる。現在使われているバルブは、ほぼ圧可変式である。
それらの紹介は、又の機会に。