鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

似たもの夫婦。

 考え方や性格が似ている夫婦を俗に「似たもの夫婦」と呼ぶが、世の中には頭のCT所見が似ているご夫婦もいるということを先日知った。

80歳男性 「歩き方がね~」

 

  • 歩行は明確にすり足
  • 頻尿あり 夜間は5回程でキレも悪い
  • 日中は活気なく傾眠傾向
  • DESH+++

 

典型的な頭部CTにおけるDESH所見



上が頭部画像だが、典型的な水頭症の画像所見"DESH"を呈している。

 

「すり足・頻尿・認知機能低下」の三徴揃った正常圧水頭症と考え、タップテスト入院を勧めた。

 

76歳女性 「特に困っていないけれど・・・」

 

特に困っていることはないが、ご主人の付き添いということで来院。「そう言えば、足は少し持ち上がりにくいかも・・・「と。

 

茫洋とした表情で、認知機能低下は何となく疑われる。頭部CTでDESH+。

 

非典型的な頭部CTにおけるDESH所見

 

ご主人はDESH+++。一緒にタップテストを受けてみられることを勧めた。

 

その後は?

 

その後、ご主人はタップテストを受けられた。結果は陽性。

 

客観テストではTMT-A(実行機能をみるテスト)で有意な改善が得られたのみであったが、ご家族からみた主観評価では、タップ後しばらくは目に力があり活気が出て、歩行もスムーズになったとのことだった。

 

自覚的には変化を感じられず、また、痛みに弱いこともあり、シャント手術は一旦見送ることになった。

 

ちなみに、奥さんはタップテストは受けなかった。本人も家族も特に日常生活に問題は感じていないようだったので、これは様子見でいいだろう。

 

もしご主人がLPシャントを受けたら、実行機能と歩行改善効果は得られそうに感じた。そして、奥さんがLPシャントを受けたら、茫洋とした表情がシャキッとなるかもしれない。

 

そんな楽しい想像にしばし浸ったことだった。