今年最後の投稿です(多分)。
2012年11月20日から2015年12月5日までの約3年間に、当認知症外来を受診された方は延べ869名。漏れも相当数ありますが、ひとまず確認出来た数を元に分析を試みました。
これまでの当認知症外来の傾向
一般的に、最も多いタイプの認知症はアルツハイマー型認知症と言われている。アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症、そしてレビー小体型認知症の三つを合わせて「三大認知症」と呼んでいる。
当ブログで最初に報告したのは以下。n=102。
次に報告したのが以下。n=152。
その次が以下。n=311。
一貫しているのは
アルツハイマー型認知症が25%前後、レビー小体型認知症は20%前後、前頭側頭葉変性症が15%前後
という傾向であった。
今回の結果は・・・?
以下。n=573。
内訳は以下。
「アルツハイマー型認知症が25%前後、レビー小体型認知症は20%前後、前頭側頭葉変性症は15%前後」という傾向は概ね変わらなかったが、各々2〜3%ずつ減ったぶん混合型(Mix)が増えた、と理解している。
当外来では古典的な「アルツハイマー+脳血管性」タイプ以外の混合型認知症が非常に多く、それらを便宜的にMultimixと呼んでいる。例えば、「レビー+正常圧水頭症」など。
www.ninchi-shou.com
ちなみに、この診断は「初診時」であることは、あらかじめお断りしておく。
特発性正常圧水頭症及び混合型認知症が多いのが、当認知症外来の特徴
約3年間、ある脳神経外科医師が「コウノメソッド」というフィルターを通した認知症外来を行ってみた結果、自分の物忘れ外来の特徴は
- アルツハイマー型認知症は約25%
- レビー小体型認知症は約20%
- 前頭側頭葉変性症は約15%
- 特発性正常圧水頭症(単独、合併いずれも)が多いのは、自分が直接シャント手術を行う脳神経外科医ということが影響しているからだろうか。
- 混合型が多い。ただし、いわゆる古典的な混合型(アルツハイマー型認知症+脳血管性認知症)に限らない。
このようになる。
日本全国では無数の認知症外来が存在するが、それぞれで病型分布は異なっているだろう。
- どの科の医師が診ているのか
- その医師がどのようなフィルターを装備しているのか
- 紹介患者が多い外来なのかどうか
こういった要因で、病型分布は相当に変わりうるものだと思う。
アルツハイマー型認知症が25%前後である理由を考え続けた結果・・・
今のところ、「当外来は他院からの紹介患者や、ブログをみて来院する方が多いから」と考えている。
- 既に他院でアルツハイマー型認知症の診断を受けて経過をみていたが、徐々に他の要素(水頭症やレビーの要素など)が加わってきて、紹介となる。
- 既に他院でアルツハイマー型認知症として治療を受けているが、その診断と治療経過に納得がいかない家族が、当ブログをみて本人を連れてくる。
このようなケースが多いため、当外来初診時のアルツハイマー率が低くなっているのではないだろうか。
最も多いと言われているアルツハイマー型認知症だからこそ、既に他院で診断されている可能性が高いのだろうし、また誤診もされやすいのだろう。
「コウノメソッド流臨床認知症学」では、下のような図が掲載されていた(P11より引用)。
そして
今、臨床医が勉強しなければならないのはATDではなく、DLBとFTLD(2疾患での頻度は35%以上)です。なぜかと言えば、薬剤による副作用が起こりやすいからです。(同書籍p13より引用)
という記載があった 。「DLBとFTLDの頻度は35%以上」とのことなので、コウノメソッドのフィルターを通すと大体そのような数字になるのだろう、と納得している。
また、当外来におけるLPCが2%という数字についてだが、LPCを厳密に分けて(レビースコア3点以上かつピックスコア4点以上という意味)、CBDやPSPも抽出済みにして(Mix,other)に入れたから、と分析した。LPC基準をやや甘くしてCBDなどの難病も混在させれば、恐らく10%は超えてくると思う。
アルツハイマー型認知症の診断は、他の可能性を除外した後に恐る恐るつけている
ということもまた、当外来でアルツハイマーと診断される方が少ない理由の一つかもしれない。
現在使用できる抗認知症薬4種類は、全てアルツハイマー型認知症で適応を取った薬である。なので、アルツハイマー以外の認知症には、基本的にはこれらの抗認知症薬の処方は出来ないことになっている(実際には、色々工夫してやりくりはしている)。
ただし、アリセプトはレビー小体型認知症に対して処方出来る(平成26年9月に適応を取得)。しかし、レビー小体型認知症に対するアリセプト処方は、一筋縄ではいかないことがあるので要注意である。
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また、経過中に前頭側頭葉変性症の要素が加わってきた方の場合、アリセプトで怒りっぽくなったり常同行動が誘発されてしまうことがあるので、こちらも注意が必要である。
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そして、「アルツハイマーと診断されたが実は・・・」というケースも相当数存在すると推測している。
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今後、認知症の病型に応じた抗認知症薬が開発される可能性はあるし、そうすると今よりもより細かな対応がしやすくはなるかもしれない。
その日が来るまで、少なくとも薬物療法においては現状使える4種類の抗認知症薬及び複数の向精神薬を、少量投与基本でやりくりする必要がある。
「約半分はアルツハイマー!」と考えるよりも、「レビーやピックが35%以上いるかもしれない!」と備えておく方が、抗認知症薬の適正処方という意味で、そして極力薬剤の副作用を出さないように、という意味でメリットが大きいと思う。
2016年もよろしくお願いします<(_ _)>
2014年4月から開始した「鹿児島認知症ブログ」ですが、お陰様で先日60000PV/月を達成し、緩やかではありますが成長を続けています。
検索流入が60〜70%を占めているので、多くの方が何らかの認知症に関する悩みをインターネットで検索し、該当する当ブログ記事を見つけて読んでいらっしゃるのだろうと想像しています。
今後も、多くの方のニーズに応えられるような記事の作成に注力していきます。
また、2016年4月には「ひらやま脳神経外科」として開業を予定しておりますので、ブログと併せてHPもたまに覗いて頂けたらと思います。
hirayama-ns.jp
では、引き続き来年も鹿児島認知症ブログを宜しくお願い申し上げます。皆様良いお年を<(_ _)>