先日、医師会から新型コロナウィルスワクチンに関する「意向調査」なるFAXが届いた。
(゚A゚;)ゴクリ
前のことがあるので、今回は慎重に臨む。
ワクチン接種可能な施設に求められる条件
まず、ワクチン受託医療機関はⅠ型とⅡ型に分けられるらしい。
Ⅰ型の受託が無理ということはすぐに分かった。
10日間に1000回以上ワクチンを打つ体制を敷くことは、通常診療を全てストップしてワクチン接種のみに特化しない限り、医師1人の無床クリニックではまず無理である。
では、「接種を行う日(毎日でなくてもよい)には、原則として100回以上の接種を行う体制」とあるⅡ型はどうか。
当院における今シーズンのインフルエンザワクチン接種者は3ヶ月間で400人なので、「約3ヶ月かけて100回以上」であれば十分に対応可能だが、「接種する日には、原則として100回以上」であれば厳しい。
「原則として」という玉虫色表現を逆手にとって毎日数名程度、3ヶ月ほどかけて400人に打つのであれば問題ない。
しかし、1日で100回以上打つのであれば、やはりワクチン接種に特化した日を設ける必要がある。
配布されるワクチンは、まずはファイザー製とのこと。これは最小流通単位が195バイアル(約1000回分)なので、恐らくⅠ型施設用。
Ⅱ型施設におけるワクチンの選択肢はモデルナ製かアストラゼネカ製のいずれかになるが、モデルナ製の保存には-20℃(±5℃)の冷凍庫が必要とのこと。
ワクチン保存のみの目的で冷凍庫を置けるスペースが、残念ながら当院にはない。
アストラゼネカ製ワクチンの保存について記載はなかったが、感染症学会によると通常のワクチンと同様に冷蔵庫保存で構わないとのこと。
これは運用上、他剤と比較してメリットが大きい。
日本感染症学会の提言を読んでみた
これだけではまだ情報不足なので、日本感染症学会のホームページを確認してみた。
COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)
この提言の中から、気になった箇所を抜粋してみる。赤文字強調は筆者によるもの。
局所反応では、mRNAワクチンの疼痛の頻度が70~80%台と高いことがわかります。疼痛の中でも、ファイザーのワクチンでは、1 回目接種後の約30%、2 回目接種後の約15%に、日常生活に支障が出る中等度以上の疼痛が報告されています 。疼痛の 70~80%という頻度は、成人における不活化インフルエンザワクチン接種時の頻度 10~22%に比べてはるかに高く、比較的接種部位の疼痛が強いとされている23価肺炎球菌ワクチン(PPSV23)の 58.3%、13 価肺炎球菌ワクチン(PCV13)の68.2%と比べて同等もしくはそれ以上です 。アストラゼネカのウイルスベクターワクチンでも若年者群で疼痛の頻度が高くなっています。
特に、ファイザー製とモデルナ製のワクチンは「痛い」ようだ。局所反応としての疼痛はある程度仕方ないが、それにしても出現頻度が70~80%は高い。
局所の疼痛以外にも、倦怠感や頭痛の頻度は50%を越えており、筋肉痛や関節痛の頻度も無視できない。1回目と2回目でバラツキはあるが、発熱の出現頻度も結構な数字である。
副反応の頻度がこれほどだと、我々医療関係者が先行して接種した場合、仕事から一時的に離脱を余儀なくされるスタッフが続出する恐れがある。そうなると、特に重症コロナの最前線の現場では一気に戦力不足に陥るのではないか。
それは学会も分かっているようで、以下のような提案がなされていた。
医療関係者への接種は所属する医療機関などで行うことになると思われますが、臨床試験での有害事象発生率をみると、接種後数日間は出勤できない職員が一定の割合でみられることが予想されます。接種人数を限定して段階的に実施するなど配慮が必要です。
総勢10名未満の当院では人員に余裕はなく、現場は常にカツカツである。接種希望の医療関係者でも、所属先が小規模のクリニックであれば、この副反応出現率を見ると気分が萎えるのではないか。
他にも気がかりはある。
mRNAワクチンは「有効率は90%以上*1」という触れ込みだが、臨床試験の被検者は若年~中年の白人が殆どを占めており、感染者数や死者数が2桁違うアジアの日本において、期待される効果が発揮できるのかは全く不明である。
また、後期高齢者~超高齢者や認知症高齢者での安全性や期待できる効果について全く分かっていない点も気がかりである。
これらの臨床試験における75 歳以上の割合は、ファイザー0.4%、モデルナ0.5%であり、アストラゼネカの臨床試験でも70 歳以上が6.8%にすぎず、超高齢者への接種の安全性も十分確認されているとは言えません。またさまざまな基礎疾患をもつ方も被接種者に含まれているとは言え、その数は十分ではありませんので、今後さらに基礎疾患ごとの安全性を検討する必要があります。
ワクチン警察は必ず現れるだろう
感染してクリニックを一時的に閉鎖することになったら患者さん達に申し訳ないとは思うだろうが、そもそもコロナへの恐怖心がない自分は、未知のワクチンに期待するよりは警戒する気持ちの方が強い。
強がりでもなんでもなく、
- 40代で糖質制限10年目
- 糖尿病などの基礎疾患なし
- コロナ関係なく、以前からリジンやビタミンCなど摂取している
このような条件でコロナに対して恐怖心を持て、という方が難しいだろう。
勿論、感染したいとは思わないし死にたいとも思わないが、コロナに罹って死ぬ確率については天文学的低さであろうとは言える。調べればすぐに分かることだが、例えば自分の年代であれば、コロナで死ぬよりも交通事故に遭って死ぬ確率の方が高い。
コロナが騒がれだして約1年経ったが、その間自分は外来で、同伴家族も含めると万の単位の不特定多数の方たちと会ってきた。患者数ペースで言うと、平均して70~75人/日である。
高齢で難聴の患者さんの耳元に、顔を近づけて話す機会はとても多い。毎日のように複数の人と「濃厚」に接触している。
そんな自分だが、2回行った抗体検査はいずれも陰性である。あと何万人に会ったら陽性になるのか分からないが、いつかは罹るのだろうとは思っている。それが顕性だろうが不顕性だろうが。
自分だけが回避できるとは最初から思っていないので別に構わないし、そもそも個人の感染防御の努力には限界がある。出来ることをしながら生業に勤しむのが無理のない生き方というものであり、無理のない生き方は自然免疫を高めることにも繋がる。
感染者を「感染者は感染対策をしなかった自業自得者。かつ、誰かに対して感染させ得る加害者*2」と考える社会で、また、感染者数や死者数が欧米と比較して2桁少ない社会で、「努力義務*3」としてワクチン接種が推奨されたとき、
- 「当然、打つんだよね?」
- 「打たないってことは、高齢者を感染させるってことだよ?」
- 「打たないのなら、仕事には出てこないで」
ワクチン・ハラスメント(ワクハラ)とでも呼ぶべきことが、日本中の医療介護現場で起きるのではないかと懸念する。
そして、マスク警察、自粛警察に続く第3の警察、「ワクチン警察」は必ずや現れるだろう。
そうこうしているうちに、暖かくなってくる
医師会が想定しているワクチン接種スケジュールは、以下のようになっている。
- コロナ最前線の医療従事者は2月下旬から3月上旬
- その他の医療従事者は3月中
- 高齢者は3月下旬から4月上旬
高齢者が打ち始める3月下旬~4月上旬は、今よりも大分暖かくなっている。*4
暖かくなると感染拡大の勢いは落ちることが予想されるが、 感染者数減のフェーズで打たれたワクチンの有効性を正確に検証することが可能なのか、獲得した抗体の効力がどれほど維持されるのか、今のところ分からない。
法律で定められた努力義務であること、未知のワクチンであることなどを十分に理解した上で、世間の空気を読むことなく、納得の上でワクチンを接種する人に対してとやかく言うつもりは全くない。
接種するにあたり最も気になる副反応については、臨床試験段階におけるものは上記したとおりだが、アナフィラキシーの頻度について最新のデータが出たので紹介する。
ファイザー製のワクチンを190万人に投与したところ、
- 21例にアナフィラキシーが出現(うち7例はアナフィラキシーの既往あり)
- 上記15例は、15分以内にアナフィラキシー出現
- 経過を追えた20人については、全員回復
という結果だったようだ。*5
現時点でのアナフィラキシー発生率は11.1人/100万人となるが、これは、インフルエンザワクチンの約1.3人/100万人と比較すると高い数字である。
なお、国内で臨床試験が行われた国内製品を利用したいという人は、下記を参考にして欲しい。
さて、これらのことを踏まえた上で当院が選ぶべき選択肢は・・・
(゚A゚;)ゴクリ
(☆全体主義的空気、自粛が人間性に及ぼす影響などを理解したい人にオススメの本。)