Nさんとお会いしたのは4年前。
もの忘れ外来初診時のHDS-Rは28/30で視空間認知テストは問題なく、頭部CTで脳萎縮は認めずとても元気な方だった。
認知症ではなかったNさんだが、加齢に伴う心身機能の衰えで独居が困難になりつつあったため、昨年夏に施設に入所となった。同時に、今後の診療継続を訪問診療医にお願いした。
先日、「昨日から様子がおかしいので診て欲しい」と家族から連絡があった。
抱えられるように診察室に入ってきたNさんの左の手足には麻痺があり、言葉もやや不明瞭だった。
頭部CTで半年前には無かった多発脳梗塞を認めたため、そのまま入院の手配をした。
その翌日、かつて診療を引きついだ訪問診療医からFAXが届いた。
当院が訪問診療を行っている方で、この2週間で5名がワクチン接種後短期間で脳梗塞を発症して入院治療中で、Nさんも、9日前に3回目のCOVID-19ワクチンを接種したところでした。ワクチンとの因果関係についてはなんともいえないのですが、少なくとも1つの誘因となったのではと思いたくなるほどの短期間の頻度で個人的には当惑しているところです。
自分がワクチンを打った患者が次々と脳梗塞を起こし入院しているという現実を前に、このFAXを送ってくれた医者は恐らく「当惑」では済まないほど憔悴しているのではないか。
ワクチンの対象者は通常は健康者であり、患者ではない。健康者を傷つけ患者にしてしまうのは、医者として慚愧に堪えないことである。
よしんば、それが善意に基づいていたとしても、接種医は報酬を貰ってワクチンを打つため、「善きサマリア人の法」に照らし合わせて自分を無謬とすることも出来ない。
善きサマリア人の法 - Wikipedia
パンデミックに抗する人為の尊さも、限界も、我々はもう十分経験したのではないだろうか。
人の営為の儚さを想いながら、ブログを書く手はどんどん重くなっていく。
www.ninchi-shou.com