認知症の代名詞的存在
アルツハイマー博士が1905年(抄録発表は翌1906年)に発表した、主に海馬と頭頂葉が萎縮してくる、脳の変性疾患。
老人斑(アミロイドβの沈着)と神経原繊維変化(リン酸化タウ蛋白)の増加によって引き起こされるとされているが、原因は未だ解明されていない。
近年は、アミロイドPETや脳脊髄液中のアミロイドβ、リン酸化タウ蛋白の増減を調べることで、確定診断に近づけるようになってきた。
しかし、これらの検査はまだ一般的ではなく、保険収載されているわけでもないので、気軽に出来るものではないのが現状。
アミロイド仮説とは?
神経細胞の細胞膜にあるアミロイド前駆体タンパク( APP)が、2種類の酵素によって切断されて生成される物質がアミロイドβ。
健常者にも普通にみられるものだが、通常はすぐに分解されてしまうため脳に過剰蓄積することはない。
しかし、加齢や病的代謝のもとでは分解除去能力が低下するため、脳内のアミロイドβの濃度が上昇する。特にアミロイドβ42の濃度が上昇すると、線維化が促進され老人斑が形成される。
この過程でアミロイドβが神経毒性を発揮して神経の変性を招き、またタウの蓄積を誘導して神経細胞を脱落させる。その結果、アルツハイマー型認知症が発症する。
これが、アミロイド仮説である。下図はSRING MIND 2011 No6より引用。
タウ仮説とは?
物質輸送に関与する微小管の部品であるタウ蛋白がリン酸化(タンパク質にリン酸基を付加する化学反応)されて微小管から遊離し、神経細胞の軸索に凝集する。これを「神経原線維変化」と呼ぶ。
アミロイドβによる老人斑は細胞の外に形成されるのに対して、神経原線維変化は細胞の中に形成され、やがて神経細胞を死滅させる。その結果、様々な認知機能障害を引き起こすのではないかと考えられている。
これがタウ仮説である。下図はSRING MIND 2011 No6より引用。
アルツハイマー型認知症の典型的な特徴
アルツハイマー型認知症の方の典型的パターンとして
- 70代で朗らか
- パッと見は「普通」にしかみえない
- 病識がない。自分は大丈夫だと思っている
- 迷子になることがある
- 質問に対して取り繕う
このような方が多い。外来では、
医者「記憶力に自信はありますか?」
患者「年を取れば大体こんなもんです。何の心配もしていません。」
医者「今日の日付は分かりますか?」
患者「急に聞かれてもね〜。朝は新聞を見たんだけどね〜。」
医者「お年はおいくつですか?」
患者「この年になれば、そんなことはあまり必要ないしね〜。大体70ぐらい?」
このようなやり取りになることが多い。
アルツハイマー型認知症の診断は慎重に
最も多い認知症と言われているので、患者さんを診たときに最初に疑いたくなるのがアルツハイマー。
しかし、個人的にはレビー小体型認知症を除外して、前頭側頭葉変性症を除外して、最後に恐る恐るアルツハイマー型認知症の診断を付けるようにしている。 その方が、より治療(この場合敢えて診断とは言わない)で良いことが出来ると思えるからである。
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