LPC(レビー・ピック複合)
超高齢者では、診断名に拘るよりも副作用を出さない処方を意識することが大事だと思っている。
88歳女性 レビー・ピック複合(LPC)
初診時
(現病歴)
最近まで独居していたが、一年前に高齢者住宅に入居。徐々に認知症は進んできていたらしい。
アリセプトを試したことはあるが特に変化なく、本人の薬嫌いもあり現在は何も内服していないと。
活気の低下や幻覚などの症状をケアマネさんに指摘され、当院受診を勧められたと。
(診察所見)
HDS-R:8.5
遅延再生:1
立方体模写:とりつくろいで行わず
時計描画:とりつくろいで行わず
クリクトン尺度:33
保続:あり
取り繕い:ありあり
病識:なし
迷子:なし
レビースコア:5
rigid:なし
幻視:あり
ピックスコア:6
頭部CT左右差:なし
介護保険:要介護2
胃切除:なし
歩行障害:ゆっくり
排尿障害:なし?
易怒性:なし
(診断)
ATD:△
DLB:△
FTLD:△
MCI:
その他:LPC
急激な変化ではなく徐々に進んできたらしい。頭部CTで基底核〜放線冠に陳旧性梗塞痕。両側淡蒼球石灰化あり。
ATD要素も持つLPCか。易怒性は目立たず。イクセロンパッチと抑肝散で介入開始。次回以降でプレタールも検討。
2週間後
機嫌良く、満面の笑みがこぼれている。
高齢者住宅スタッフからみて著明に改善しているようだ。本人が病院にいくのを楽しみにしていたと。娘さんがうれしそう。
プレタールを加えて維持していく。
ATD>DLB>FTLDといった順番を意識した
この方は、ATD(アルツハイマー型認知症)、DLB(レビー小体型認知症)、FTLD(前頭側頭葉変性症)、いずれの要素もお持ちだった。
この場合、ひとまずLPC(レビー・ピック複合)と考えるようにしているが、猛烈な取り繕いと保続から、最も影響が大きいのがATDで、そこに少しDLBの要素が加わり、FTLDの要素は語義失語メイン、と考えた。
薬剤選択の根拠としては、
- アリセプトは効果がなかったようだ。超高齢でもあり、かつDLBの要素があるので、中核薬はイクセロンパッチを選択しよう
- 易怒性については、理不尽にキレるというわけではないようだ。FTLDの要素としては、意味性認知症>ピック病だろう。抑制系は不要だろうが、幻視対策で抑肝散を夕方だけ出してみよう
このように考えて処方を行った。
体幹の傾きにもDLBらしさが出ていると思われるが、低活動性せん妄や食欲低下などもないため、当面ニコリンは不要で維持していけるだろう。
高齢者住宅のスタッフからの、ありがたいメモを掲載して今回は終了。