水頭症に対して行われるシャント手術は、脳外科領域においては比較的低侵襲な手術である。考えられる手術のリスクとして
- 脊髄損傷(LPシャントの場合)
- 脳損傷(VPシャントの場合)
- 腸管損傷(LP、VP両方)
- 感染症
などがあげられるが、これらが起きる頻度は非常に低いものである。
ちなみに、LPとは「腰椎-腹腔」、VPとは「脳室-腹腔」の略のこと。他には「脳室-心房」をつなぐやり方(VA)もある。
LPシャントを抜去し、新たにVPシャントを留置した70代女性
くも膜下出血後に続発性の水頭症を発症した70代の女性。
LPシャント術で活気や運動面に向上が見られたのだが、術後数ヶ月経過して徐々に活気低下、運動能力低下を来してきた。
背部に留置したシャントバルブを押しても戻りが悪いため、シャントバルブまたは背側チューブに不具合が起きた可能性を考えた。
元々腰部脊柱管狭窄症も指摘されており、整形外科からは手術適応有りと言われていた。
そこで、今回は新たにVPシャントを留置し、詰まってしまったLPシャントシステムは抜去した。*1
詰まっていたシャントバルブの写真
取り除いたシャントバルブは、このようになっていた。
くも膜下出血発症から2ヶ月近く間を空けてのLPシャント術だったようだが、血液が混入した髄液の影響で徐々に詰まっていったのかもしれない。
ちなみに、新品のシャントバルブはこのようなものである。
シャントシステムに不具合が起きる原因には、
- 汚染された髄液に晒される、またはデバイスそのものに対する拒絶反応が起きる
- 背側チューブが転倒などにより断裂してしまう
- 腸炎などにより、腹腔側チューブが閉塞してしまう
このようなことが考えられる。
シャント術後しばらくして、もし術前のような状況に戻っていった場合には、「年をとったしなぁ」と考える前に、「シャントシステムにトラブルが起きたのでは?」と考えてみる必要がある。