フェルガードで経過観察中の方達
記憶力の衰えを、本人と家族が実感しているが、日常生活は自立している。しかし複雑な段取り(旅行のために飛行機やホテルを予約したり、レンタカーを手配したりなど)は苦手になっている。それが、軽度認知機能障害(MCI)の方達。
軽度認知機能障害の方達は、5年以内に約半数がアルツハイマー型認知症に移行するというデータもあるようだが、今のところ明確な治療方針や過観察方針が定まっているわけでは無い。
「早くから薬を飲んでいたら、認知症にならなくても済むんじゃないの?」
と聞かれることはよくあるが、
「そういうデータは今のところ無いようですね」
とお答えしている。
自分の今の方針は、
- HDS-Rは21点以上で、透視立方体模写と時計描画は問題なし
- しかし、記憶力低下を本人と家族が感じている
こういう方達には、まずフェルガード100Mを3ヶ月飲んでもらい、外来フォローとしている。
60歳女性 軽度認知機能障害(MCI)
初診時
(記録より引用開始)
60歳になってから、記憶力に自信がない。家族からも指摘を受ける。
HDSR:25
遅延再生:3
立方体模写:OK
時計描画:OK
保続:なし
取り繕い:なし
病識:あり
迷子:なし
レビースコア:0
rigid:なし
ピックスコア:0
頭部CT左右差:なし
クリクトン尺度:0
介護保険:なし
胃切除:なし
(診断)
ATD:
DLB:
FTLD:
MCI:〇
その他:
自覚的他覚的な記憶力低下。複雑な遂行能力低下などはないようだが。対策したいという希望も強く、運動とフェルガードで3ヶ月後に再診。
3ヶ月後
家事動作を面倒がらずにするようになったと旦那さんは嬉しそう。明らかに変わっています、と。本人は、「前回受診してから、しっかりしなきゃと自覚するようになった」とのこと。
HDSR29点。前回は25点。フェルガード継続で3カ月後に再診。
(引用終了)
患者さんの不安をそのままにするべきではない
HDS-R(長谷川式簡易痴呆スケール)の基準値は21点。これを下回ると「認知症疑い」というのが現在の一応の基準。
では、物忘れ外来を受診してHDS-Rが23点だった場合
「基準値以上だから大丈夫ですよ」
と果たして言ってよいのだろうか?
その後どのように経過するかは、正確には予想しづらいものである。
フェルガードを内服するかどうかはさておいても、自分の場合は
今回の検査の結果では認知症ではないと思いますが、ご心配なようでしたら3ヶ月おきぐらいで受診していきましょう
とお話しするようにしている。
見つけてしまった以上は、しっかりとフォローし続けることが大事だと思うので。
今回はこれで終了。