鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

「長寿遺伝子(サーチュイン)で認知症を予防」を読んで。

グルタチオンとの組み合わせは?



ネットでこのような記事を見つけた。

 

www.cbnews.jp



長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)とは、
Wikipediaによると 

 

サーチュイン遺伝子は、長寿遺伝子または長生き遺伝子、抗老化遺伝子とも呼ばれ、その活性化により生物の寿命が延びるとされる。
サーチュイン遺伝子の活性化により合成されるタンパク質、サーチュイン(英語Sirtuin)はヒストン脱アセチル化酵素であるため、ヒストンDNAの結合に作用し、遺伝的な調節を行うことで寿命を延ばすと考えられている。この様なサーチュインの作用メカニズムはマサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテのグループが1999年に見出した[1]酵母のSir2遺伝子がヒストン脱アセチル化酵素であることを見出し、この酵素の作用が代謝遺伝子サイレンシング加齢に関与していることを示唆した[2]
サーチュイン遺伝子による寿命延長効果は酵母[3]線虫[4]ショウジョウバエ[5]で報告されているが、これらの実験結果を否定する報告もあり[6]、まだ確定した効果とは言えない。


このような遺伝子。最近マスコミでもよく取り上げられるようになってきた。

このニュースの中で、

その結果、通常のマウスでは認知機能障害が起こっていたが、サーチュイン遺伝子発現マウスでは認知機能が正常に保たれていた。原因を探るため、脳血流を測定したところ、サーチュイン遺伝子発現マウスは頚動脈を細くしたにもかかわらず、脳血流がほとんど減少していないことが判明。血管を拡張させる物質(一酸化窒素)を合成する酵素が活性化した状態で保たれ、脳血管が拡張していたため、脳血流の維持につながっていた。



一酸化窒素(NO)は血管を拡張させるが、同時に有害なフリーラジカルの側面も持つ。

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血により器質的なダメージを負った結果の疾患であることを考えると、既に脳血管性認知症の方の脳血流を増やすことが、認知症症状改善に繋がるイメージはあまりない。次の脳梗塞を予防する意味合いは大きいのかも知れないが。

この研究は、脳血管を拡張させなかったマウスは認知力が落ちた(恐らく脳梗塞を発症したということか)が、拡張させたマウスは脳血流を保っていた(認知力が落ちなかった)という内容。

当たり前と言えば当たり前だが、ポイントはサーチュイン量が2〜3倍になると、一酸化窒素の発生量が増えて、その結果脳血管が拡張する、というところなのだろう。

ただ、一酸化窒素(NO)の増加により、脳血流が増えるだけでは無く、パーキンソニズムが発現したりなど、負の側面もありそうな気がする。

グルタチオンが、NOなどのフリーラジカルをキャンセルする効果でパーキンソニズムに良い効果をもたらすことを考えると、

グルタチオン投与+サーチュイン遺伝子賦活

このようなことが可能になれば、認知症治療においてブレイクスルーになる気がした。

NOをキャンセルしたら血管拡張はどうなる?という点を解決していない妄想レベルの話ではあるが。

この分野は相当に奥が深く、面白い。