読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

【報告】4年間の認知症外来の結果。

用語や定義、データなど

 

いつも当ブログをご覧になって下さり、誠にありがとうございます<(_ _)>

 

2016年は自分にとって「クリニック開業」という節目の年になりました。

 

2014年4月に始めた当ブログは、2016年8月19日に累計100万PVを達成。現在、月間およそ10万PVでUUは3万人程。ゆっくりとではありますが、成長しています。

今年の締めくくりとして、2012年11月から2016年12月2日までの、約4年間の認知症外来データをまとめてみましたのでご覧下さい。

 

ちなみに、ここで出したデータは全て、「認知症外来初診時における診断結果」です。そして、「アルツハイマー型認知症+特発性正常圧水頭症」といったような複数の認知症疾患を初診時で併発している場合や、進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核変性症といった稀少変性疾患は、【Other】に分類してあります。

 

また、診断にあたっては全例で頭部CT及び長谷川式スケールを施行しています。その他、上肢筋固縮の確認等の神経学的検査を行っていますが、MIBG心筋シンチその他の核医学的検査はほぼ行っておりません。悪しからずご了承下さい。

 

これまでの結果と傾向

 

2014年5月にまとめた、N=85のデータ。

 

ちなみにここでいうNとは、認知症外来総受診者数から、正常の方と軽度認知機能障害(MCI)を除いた数、つまり「何らかの」異常を認めた方の数である。

 

www.ninchi-shou.com

 

2014年7月にまとめた、N=152のデータが以下。

 

www.ninchi-shou.com

 

2014年12月にまとめた、N=311のデータが以下。

 

www.ninchi-shou.com

 

2015年12月にまとめた、N=573のデータが以下。

 

www.ninchi-shou.com

 

いずれも、大体「アルツハイマー型認知症が25%前後、レビー小体型認知症は20%前後、前頭側頭葉変性症は15%前後」で、3つの変性疾患を足して50%前後という傾向が続いていた。

 

2016年12月2日時点の認知症外来データ

 

4年間認知症外来をやってきた結果、受診患者総数は2016年12月2日現在で、1161名となった。その内訳が以下。

 

f:id:takapisatakapisa:20161202141051j:plain

 

1161名から、正常272名と軽度認知機能障害(MCI)113名を除いた、776名をNとした。

その中での病型内訳が以下。

 

2016年年認知症外来受診者うちわけ

 

以前は、レビー小体型認知症(DLB)と前頭側頭葉変性症(FTLD)両方の要素を持つ患者をLPCとカテゴライズしていたが、今回LPCはOtherに含めた。

 

ATD+DLB+FTLDの合計が52%という結果は、これまでの傾向と大体同じであった。

 

開業してからの変化は?

 

前回データ作成時から、認知症外来の1年間受診者数は292人、N(実患者数)の増加は1年間で203人であった。

 

当院開院は2016年4月22日だったが、12月2日までの予約認知症外来受診者が184名。そのうち正常と判断した方が36名で、MCIが16名。何らかの問題があった方が132名という結果。これを病型別に分けてみたのが以下。当院受診患者のみのデータである。

 

2016年認知症外来病型分類

 

若干だが、「ATDが増えてきたかな?」と感じる。

 

勤務医の頃は週に一回だけの予約物忘れ外来だったが、開業してからは毎日外来である。これまでよりも患者さん達が予約を取りやすくなった影響で、初期のアルツハイマー型認知症の方達が受診しやすくなったのかもしれない。

 

また、これまではアルツハイマーか意味性認知症かで迷った際には、抗認知症薬による副作用を回避する*1という目的もあり、意味性認知症寄りに診断していた傾向があった。

 

しかし経験を積んだことで、ためらいがちであった初診時アルツハイマーの診断に少し積極的になってきたことで、診断割合がやや増えたのかもしれない。

 

ただし今後も、「基本的にはアルツハイマーは他の認知症を除外して診断をつける」という方針に大きな変化はないと思っている。

 

今後の展望

 

認知症患者さんを診れば診るほど、自分がまだまだ知らないことが多いと思わされるし、「どうしたものか・・・」と途方に暮れるような症例も経験する。

 

アルツハイマー病一つをとっても、患者像は実に多様である。

 

「明るく元気で朗らかな70代女性、取り繕い言動が目立ち、道に迷いやすくなっている」

 

といった典型例に当てはまらない、でもアルツハイマーなのかな?という方を経験する度に思うのは、「せめて、アルツハイマーにしろレビーやピックにしろ、典型例だけは取りこぼさないように気をつけよう」ということである。

 

病理学的な診断の正しさに、臨床家としてどこまで肉薄できるのかは追求していきたいが、全例に核医学検査(SPECTやDAT scanなど)を行うのは現実的ではないし、結局は

 

  おそらくこの人はアルツハイマー型認知症だとは思うが、わずかに感じるレビーの要素は忘れずに経過を見よう

 

といった、「自分の診断すらどこかで疑い続ける」という、これまでもやってきた手法の精度をより高めていくことが重要だと思っている。

 

今年は、

 

  • 鉄タンパク不足が妊婦にもたらす精神的変化
  • 女性一般における驚くほどの顕在的、潜在的鉄不足の把握
  • 質的栄養失調がもたらす精神面への悪影響
  • グルタチオン点滴療法の多方面への応用

 

このようなことを経験し、自分の診療範囲を拡げることが出来た。

 

これまでも糖質制限を基本方針として様々な疾患に取り組んできたが、昨年(2015年)末に出版された宗田先生の本のインパクトは大きく、自分の進む方向性に確信が持てた。

 

www.ninchi-shou.com

 

認知症に特化したクリニックではない当院だが、他分野で吸収したことを認知症診療にも応用し、互いをフィードバックさせながら、今後もより多くの患者さんにアプローチしていきたいと考えている。

 

では来年も引き続き、宜しくお願いいたします。皆様良いお年を<(_ _)>

 

*1:基本的に抗認知症薬は、全てアルツハイマー対策で開発されている