認知症の病型データ
以前掲載した認知症外来データを更新したのでご報告。
前回はこのような感じであった。
そして、新しいデータは以下のように。
認知症外来を訪れた人の、大体14%が問題ない方で、11%が軽度認知機能障害の方。この方達を除いて、何らかの認知症もしくは問題のあった方達152名をグラフ化すると、上図のようになった。
アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症の割合が以前とほぼ変化が無いことに驚く。
前回データ抽出時との相違点は、
- 様々な認知症疾患複合のうち、レビーピック複合を正規項目で抽出した
- 正常圧水頭症も正規項目で抽出した
- これらを除いた複合及びその他項目はMixで一括りにした
ちなみに、便宜上CBD(皮質基底核変性症)とPSP(進行性核上性麻痺)はLPCに組み込んである。
当院の特徴としては特発性正常圧水頭症(iNPH)の手術が多いということがあり、外来では最初からiNPH疑いでの紹介例も多く、また患者さんの家族がiNPHを疑って来院されることもある。このことによりNPH(特発性と続発性を含む)6%という、恐らく他院外来より多い数字になっていると考える。
ちなみに、河野先生のブログ(2014年5月19日付)によると
このような分布が提示されている。
ここで気づくのが、上記左の
小阪先生の分布におけるDLB、FTLD、VDのパーセンテージと、当方の外来における割合がほぼ一緒、ということ。各々1%ずつしか違いがない。LPCの概念を取り入れているにも関わらず。何故だろう?
自分がDLBやFTLDと診断している人達やMixの方達の中に、少しずつLPCが混ざっているのかもしれない。それにしても、相変わらずアルツハイマーが少ない。
(追記。「ピック病の症状と治療」のp202によると、河野先生の外来初診時におけるLPCの頻度は6.5%とのこと。初診時は6〜7%ぐらいで、長期経過では15%前後に落ち着いてくるのだろうか?)
アルツハイマーが少ないのは何故?
病型診断の際に、アルツハイマーか意味性認知症かで悩むことは多い。
自分の場合は恐らく
アリセプトで痛い目をみないように、無意識に意味性認知症寄りに病型診断を行っている
のではないだろうか?その結果がATD25%という数字になって現れているのではないだろうか?
つまり、アルツハイマーは消極的に診断しているということ。
意味性認知症と診断したら、コウノメソッドにおける中核薬の第一選択は今のところレミニール(念のためだが、レミニールの適応はアルツハイマーのみ)と考えている。
実際の診断がアルツハイマーだったとしても、レミニール4mgスタートでナウゼリンを併用した、中核薬での「FTLDセット」であれば、そうそう痛い目には遭わないだろう、という推測もある。
易怒性や常同性を同時に認めていれば、当然ウインタミン少量処方もセットである。その場合はウインタミンを先行させて、落ち着いてからレミニールというパターンにしていることも多い。
診断が??のままで、迷いながらも経過をみている人達もいるので、
最近は「長期戦を闘うために、初戦で失敗しないことが大事」という考えになってきた。
n=400ぐらいになった時点で、またデータを分析したいと思う。
今回はこれで終了。