鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

認知症外来データ公開(連続206例)

認知症の病型データ

 
以前掲載した認知症外来データを更新したのでご報告。
 
 
 
前回はこのような感じであった。

認知症外来データ①

 

そして、新しいデータは以下のように。
 
認知症外来データ②
認知症外来データ③
 

認知症外来を訪れた人の、大体14%が問題ない方で、11%が軽度認知機能障害の方。この方達を除いて、何らかの認知症もしくは問題のあった方達152名をグラフ化すると、上図のようになった。

アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症の割合が以前とほぼ変化が無いことに驚く。

前回データ抽出時との相違点は、

  • 様々な認知症疾患複合のうち、レビーピック複合を正規項目で抽出した
  • 正常圧水頭症も正規項目で抽出した
  • これらを除いた複合及びその他項目はMixで一括りにした
 
ちなみに、便宜上CBD(皮質基底核変性症)とPSP(進行性核上性麻痺)はLPCに組み込んである。

当院の特徴としては特発性正常圧水頭症(iNPH)の手術が多いということがあり、外来では最初からiNPH疑いでの紹介例も多く、また患者さんの家族がiNPHを疑って来院されることもある。このことによりNPH(特発性と続発性を含む)6%という、恐らく他院外来より多い数字になっていると考える。

ちなみに、河野先生のブログ(2014年5月19日付)によると




このような分布が提示されている。

ここで気づくのが、上記左の小阪先生の分布におけるDLB、FTLD、VDのパーセンテージと、当方の外来における割合がほぼ一緒、ということ。各々1%ずつしか違いがない。LPCの概念を取り入れているにも関わらず。何故だろう?

自分がDLBやFTLDと診断している人達やMixの方達の中に、少しずつLPCが混ざっているのかもしれない。それにしても、相変わらずアルツハイマーが少ない。

(追記。「ピック病の症状と治療」のp202によると、河野先生の外来初診時におけるLPCの頻度は6.5%とのこと。初診時は6〜7%ぐらいで、長期経過では15%前後に落ち着いてくるのだろうか?)

アルツハイマーが少ないのは何故?

 
病型診断の際に、アルツハイマーか意味性認知症かで悩むことは多い。

自分の場合は恐らく
 
アリセプトで痛い目をみないように、無意識に意味性認知症寄りに病型診断を行っている
 
のではないだろうか?その結果がATD25%という数字になって現れているのではないだろうか?
つまり、アルツハイマーは消極的に診断しているということ。

意味性認知症と診断したら、コウノメソッドにおける中核薬の第一選択は今のところレミニール(念のためだが、レミニールの適応はアルツハイマーのみ)と考えている。

実際の診断がアルツハイマーだったとしても、レミニール4mgスタートでナウゼリンを併用した、中核薬での「FTLDセット」であれば、そうそう痛い目には遭わないだろう、という推測もある。

易怒性や常同性を同時に認めていれば、当然ウインタミン少量処方もセットである。その場合はウインタミンを先行させて、落ち着いてからレミニールというパターンにしていることも多い。

診断が??のままで、迷いながらも経過をみている人達もいるので、

 

www.ninchi-shou.com

 

最近は「長期戦を闘うために、初戦で失敗しないことが大事」という考えになってきた。

n=400ぐらいになった時点で、またデータを分析したいと思う。

今回はこれで終了。