今年最後の投稿です
いつも当ブログをご覧になって下さり、誠にありがとうございます。
今年の締めくくりとして、平成26年12月2日時点での認知症外来データをまとめてみました。以前のデータについては下記をご参照下さい。
www.ninchi-shou.com
まず、以前からよく使われている、アルツハイマー型認知症が半分を占めるというグラフが以下。
次に、コウノメソッドを用いた認知症外来を始めて、一番最初に出したデータはこちら。
ちょうど一年ぐらい前ですね。アルツハイマーの割合に注目しながらご覧下さい。
次のデータがこちら。
このデータ抽出時から、DLB+FTLDをLPCとして区別し、更にNPHも加えるようになりました。相変わらずアルツハイマーは1/4ぐらいです。
そして、一番新しいデータがこちら。
そして、その内訳がこちら。
454人中、何らかの認知症を持つ方が311名。81名が正常で、62名がMCIの方でした。
以下で、少し考察してみます。
ATD+DLB+FTLDで、大体認知症の60%前後を占めている
これまでの3回のデータを通じて共通しているのは、大体アルツハイマー+レビー+FTLD(ピック病+意味性認知症)で、認知症の60%前後を占めている、ということ。
LPC(レビー・ピック複合)については、大分整理して2%という数字になった。
- CBD 2名
- DNTC 3名
- FTD-MND 1名
- MSA-C 1名
- MSA-P 1名
- PSP 2名
今までLPCに入れていたこれらの疾患を外し、厳密にレビースコア3点以上かつ、ピックスコア4点以上の基準に則って整理し直した。基準を緩めると、LPCっぽい人は相当な数になる。各々略称で書いているが、詳しくは下記をご参考に。
iNPH+DLBやATD+VaDなどのように、複数の認知症疾患を合併しているMixは37名。
その他(頭部外傷後の認知面低下、胃切除後のVit.B12低下、AGD疑いなどなど)が32名。
全ての項目をグラフ化することも考えたが、明らかに見にくくなってしまうので、その他やMix、CBDなどは便宜上全てグラフの「Mix」に入れてある。
病型分布から、中核薬処方の工夫を考えてみる
現在使用できる中核薬である、アリセプト、レミニール、リバスチグミン、メマリーは、どれも「アルツハイマー型認知症」に対して保険適応となっている薬剤である。
しかし、用量の工夫によってはアルツハイマー型認知症以外の認知症にも効果がある。これまでにも、当ブログで様々な例を挙げてきたが、その経験と今回のデータから、効率的な中核薬の使い方について考えてみる。
アリセプト
もし認知症の半数がアルツハイマー型認知症で占められているのなら、極端な話アリセプトを出せば半分は当たる、ということになる。
しかし、自分のデータに従うのであれば、盲目的に処方した場合のアリセプトの打率は、2割5分程になる計算(DLBはこの場合除く)。しかも、「穏やかでグラマリール併用の必要が無いアルツハイマー型認知症」となると、更に少なくなる。
病型診断で迷った末にアリセプトを出すとしたら、
- 多分、アルツハイマー型認知症かな?
- 明らかな歩行障害や幻視はなさそうだ
- 怒りっぽくもないようだ
- レビー小体型認知症やピック病だった場合のことを考えて、初回規定量の3mgよりも更に少なく、1.5〜2mgぐらいで処方しよう
このような考えの元での処方になるだろう。
これであれば、ATD+DLBで43%の患者に対する、比較的安全な処方になると思う。
最近、DLBに対してアリセプトが適応をとったが、用量用法規定がATDと同じなのが気になる。
「症状の進行に伴い、極量の10mgまで上げていこう」という出し方は危ないと思っているし、実際自分は殆どの例において10mgまで処方していない。
レミニール
レミニールは、
- 脳血管性認知症かな?
- 前頭側頭葉変性症の意味性認知症かな?
このように考えての処方がメインとなろうか。
勿論、元々アルツハイマー型認知症に対して開発された薬であるので、ATD+FTLD+VaDで46%をカバーしうる可能性はある。DLBに対しては、今のところファーストチョイスとはしていない。
初回投与量は規定の8mg開始ではなく、4mg+ナウゼリン(吐き気対策)で。
極量の24mgまで一気に上げるような処方はしていない。12〜16mgぐらいが一番多い。
リバスチグミン
イクセロンパッチ、リバスタッチパッチはどうか。
- 恐らくレビー小体型認知症かな?
- 病型診断に迷うが、アセチルコリンは補充したい、歩行も少し良くしたい、活気や意欲上昇を狙いたい
このような場合に処方を考える。
最もオールラウンダーな中核薬という印象のリバスチグミン。そして当然アルツハイマー型認知症の薬なので、ATD+DLB+FTLD+VaDで64%をカバーし得る可能性がある。
極量の18mgで維持している人は殆どいない。9mgの方が大半を占める。
メマリー
メマリーは難しい。
- 怒りっぽいアルツハイマー型認知症の方なのかな?
- ふらつきやめまいなどのない方
こういった条件で使われることが多いと思うが、それでも他剤を押しのけていきなりメマリーをファーストチョイスとはしにくい。
ただ、途中で他の3種の中核薬に追加して、最終的に残っているのがメマリー、というケースは結構ある。
極量の20mgまで使っている人はごく一部。5〜15mgの間で使用している。
高打率を狙うなら、リバスチグミン
今回のデータとこれまでの処方経験から考えると、「中核薬で安全に、かつ高打率を狙うならリバスチグミン」という結果になる。
勿論、抑制系の薬剤との組み合わせまで考えると、まだまだ処方の幅は拡がる。また、リバスチグミンの副作用も無いわけではない。
そして、「本当にこの方に中核薬が必要なのか?」ということを考え続けることが重要だと思う。
来年もよろしくお願いします<(_ _)>
2014年の4月から稼働を始めた鹿児島認知症ブログですが、おかげさまで80000PVを超え、順調に記事を増やしております。
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河野 和彦
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