鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

【2014年まとめ】2年間の認知症外来結果報告と、抗認知症薬の使い分けについて。

今年最後の投稿です


いつも当ブログをご覧になって下さり、誠にありがとうございます。

今年の締めくくりとして、平成26年12月2日時点での認知症外来データをまとめてみました。以前のデータについては下記をご参照下さい。

 

www.ninchi-shou.com

 

まず、以前からよく使われている、アルツハイマー型認知症が半分を占めるというグラフが以下。

 

3大認知症の割合

 

次に、コウノメソッドを用いた認知症外来を始めて、一番最初に出したデータはこちら。

 

アルツハイマーは25%



ちょうど一年ぐらい前ですね。アルツハイマーの割合に注目しながらご覧下さい。

次のデータがこちら。

 

アルツハイマーは26%


このデータ抽出時から、DLB+FTLDをLPCとして区別し、更にNPHも加えるようになりました。相変わらずアルツハイマーは1/4ぐらいです。

そして、一番新しいデータがこちら。

 

認知症外来に訪れた認知症患者のグラフ化


そして、その内訳がこちら。

 

認知症外来連続454名の内訳


454人中、何らかの認知症を持つ方が311名。81名が正常で、62名がMCIの方でした。

以下で、少し考察してみます。

ATD+DLB+FTLDで、大体認知症の60%前後を占めている


これまでの3回のデータを通じて共通しているのは、大体アルツハイマー+レビー+FTLD(ピック病+意味性認知症)で、認知症の60%前後を占めている、ということ。

LPC(レビー・ピック複合)については、大分整理して2%という数字になった。

  • CBD 2名
  • DNTC 3名
  • FTD-MND 1名
  • MSA-C 1名
  • MSA-P 1名
  • PSP 2名

今までLPCに入れていたこれらの疾患を外し、厳密にレビースコア3点以上かつ、ピックスコア4点以上の基準に則って整理し直した。基準を緩めると、LPCっぽい人は相当な数になる。各々略称で書いているが、詳しくは下記をご参考に。
 
 
iNPH+DLBやATD+VaDなどのように、複数の認知症疾患を合併しているMixは37名。
 
その他(頭部外傷後の認知面低下、胃切除後のVit.B12低下、AGD疑いなどなど)が32名。
 
全ての項目をグラフ化することも考えたが、明らかに見にくくなってしまうので、その他やMix、CBDなどは便宜上全てグラフの「Mix」に入れてある。
 

病型分布から、中核薬処方の工夫を考えてみる


現在使用できる中核薬である、アリセプト、レミニール、リバスチグミン、メマリーは、どれも「アルツハイマー型認知症」に対して保険適応となっている薬剤である。

しかし、用量の工夫によってはアルツハイマー型認知症以外の認知症にも効果がある。これまでにも、当ブログで様々な例を挙げてきたが、その経験と今回のデータから、効率的な中核薬の使い方について考えてみる。

アリセプト


もし認知症の半数がアルツハイマー型認知症で占められているのなら、極端な話アリセプトを出せば半分は当たる、ということになる。

しかし、自分のデータに従うのであれば、盲目的に処方した場合のアリセプトの打率は、2割5分程になる計算(DLBはこの場合除く)。しかも、「穏やかでグラマリール併用の必要が無いアルツハイマー型認知症」となると、更に少なくなる。

病型診断で迷った末にアリセプトを出すとしたら、


  • 多分、アルツハイマー型認知症かな?
  • 明らかな歩行障害や幻視はなさそうだ
  • 怒りっぽくもないようだ
  • レビー小体型認知症やピック病だった場合のことを考えて、初回規定量の3mgよりも更に少なく、1.5〜2mgぐらいで処方しよう
 
このような考えの元での処方になるだろう。
 
これであれば、ATD+DLBで43%の患者に対する、比較的安全な処方になると思う。

最近、DLBに対してアリセプトが適応をとったが、用量用法規定がATDと同じなのが気になる。
 
「症状の進行に伴い、極量の10mgまで上げていこう」という出し方は危ないと思っているし、実際自分は殆どの例において10mgまで処方していない。
 

レミニール

 
レミニールは、
 
  • 脳血管性認知症かな?
  • 前頭側頭葉変性症の意味性認知症かな?
 
このように考えての処方がメインとなろうか。
 
勿論、元々アルツハイマー型認知症に対して開発された薬であるので、ATD+FTLD+VaDで46%をカバーしうる可能性はある。DLBに対しては、今のところファーストチョイスとはしていない。
 
初回投与量は規定の8mg開始ではなく、4mg+ナウゼリン(吐き気対策)で。
 
極量の24mgまで一気に上げるような処方はしていない。12〜16mgぐらいが一番多い。
 

リバスチグミン

 
イクセロンパッチ、リバスタッチパッチはどうか。
 
  • 恐らくレビー小体型認知症かな?
  • 病型診断に迷うが、アセチルコリンは補充したい、歩行も少し良くしたい、活気や意欲上昇を狙いたい
 
このような場合に処方を考える。
 
最もオールラウンダーな中核薬という印象のリバスチグミン。そして当然アルツハイマー型認知症の薬なので、ATD+DLB+FTLD+VaDで64%をカバーし得る可能性がある。
 
極量の18mgで維持している人は殆どいない。9mgの方が大半を占める。

メマリー

 
メマリーは難しい。
 
  • 怒りっぽいアルツハイマー型認知症の方なのかな?
  • ふらつきやめまいなどのない方
 
こういった条件で使われることが多いと思うが、それでも他剤を押しのけていきなりメマリーをファーストチョイスとはしにくい。
 
ただ、途中で他の3種の中核薬に追加して、最終的に残っているのがメマリー、というケースは結構ある。
 
極量の20mgまで使っている人はごく一部。5〜15mgの間で使用している。
 

高打率を狙うなら、リバスチグミン

 
今回のデータとこれまでの処方経験から考えると、「中核薬で安全に、かつ高打率を狙うならリバスチグミン」という結果になる。
 
勿論、抑制系の薬剤との組み合わせまで考えると、まだまだ処方の幅は拡がる。また、リバスチグミンの副作用も無いわけではない。
 
 
そして、「本当にこの方に中核薬が必要なのか?」ということを考え続けることが重要だと思う。
 

来年もよろしくお願いします<(_ _)>

 
2014年の4月から稼働を始めた鹿児島認知症ブログですが、おかげさまで80000PVを超え、順調に記事を増やしております。
 
当ブログが、読んだ方にとって何らかのご参考になることを願っております。
 
では来年もよろしくお願いします<(_ _)>
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