自分の物忘れ外来を訪れた方では、過去最高齢である。
99歳女性 お元気すぎて脱帽・・・
初診時
(既往歴)
かつて不整脈に対してペースメーカー植え込みを勧められるも、熱発その他の理由で断念
(現病歴)
今年の一月から言動がおかしいことがたまにある。寒さや季節の変わり目で一過性に様子が変わると。
今は落ち着いているが、一度診て貰いたくて来ましたとご家族。
(診察所見)
HDS-R:20.5
遅延再生:4
立方体模写:OK
時計描画:OK
クリクトン尺度:16
保続:なし
取り繕い:なし
病識:なし
迷子:なし
レビースコア:-
rigid:なし
幻視:なし
ピックスコア:-
頭部CT左右差:なし
介護保険:あり
胃切除:なし
歩行障害:なし
排尿障害:なし
易怒性:なし
(診断)
ATD:
DLB:
FTLD:
MCI:
その他:
環境変化には弱いのでしょうが、年齢からすると素晴らしいと思いますよ。
ご家族、本人、共に嬉しそうに帰って行かれた。
(引用終了)
99歳方の頭部CT、長谷川式テスト、図形テストを紹介
頭部CT
100歳を目の前にした元気な超高齢者の海馬が萎縮していたところで
だから何?
であろう。ここに何か病的な意義を見いだそうとしても益の無いことのように思う。
また、これは統計などとった訳ではない感覚的な話ではあるが、超高齢者には頭蓋骨が分厚い方が多いように思う。
「この分厚い骨が守ってくれたから、この年齢に到達することが出来たのだろうか?」などと、考えることがたまにある。
長谷川式テスト
年齢を問うと、
92歳ぐらい・・・?
とニコニコしながら答えた。
敢えてサバを読んで答えて、こちらの反応を楽しんでいるように見えた。その証拠に、年齢の記入欄には「99歳」としっかり書けているのだから。
冷静な自分はそっと点数から0.5点引いておいたが、むしろ加点したくなるぐらいキュートな反応であった。*1
図形テスト
これもまあ、問題なしでいいだろう。
矍鑠とした白寿、恐るべし!
春先の気候が不安定な時期を「木の芽時(コノメドキ)」と呼ぶ。昔からこの時期は、精神や体調が不安定になりやすいから気をつけましょう、と言われてきた。
春先に限らず、高齢者は季節の変わり目で調子を崩しやすい。そういう時期には、頭痛や眩暈で脳外科外来を訪れる方達が一気に増える。
この方が一時的に調子を崩すのは、やはり季節の変わり目が影響しているのだろう。その他、一時的な不整脈による不快感が影響している可能性も考えられる。
ここ数年、外来で明治生まれの方をお見かけすることがほぼなくなってきた。段々寂しくなっていくが、仕方の無いことである。
今回の様に矍鑠としている方には、そうそうお目にかかれない。希有な存在として有り難く感じたので、手を合わせて拝んでみたら笑われた(笑)。お帰りの際に、
お気を付けて
と声を掛けたら、
先生も頑張ってね!
と激励の言葉を頂いた。
99歳からすると、40歳など「まだまだヒヨッコ!」ということであろう。
ありがたや、ありがたや<(_ _)>