当院には､頭痛の相談で看護師さんや介護福祉士さんがよく訪れる｡
1735名の医療･介護従事者を対象としたアンケート調査では､特に看護師と介護福祉士において慢性頭痛有病率が高いことが明らかとなっている｡*1
｢医療福祉従事者における慢性頭痛の現状と業務への影響について｣より引用
シフト制で夜勤ありだと､もはや仕事に自律神経を狂わされ体調不良にさせられているようなものなのだが､患者を看るという責任ある仕事に従事する医療介護職は､多少の不調は我慢してでも仕事に行く｡人員潤沢で簡単に休める現場など､そうそうない｡
その際に､｢そんなに痛くはないけど､念のために･･･｣と鎮痛剤を飲んで仕事に行く人たちの行く末に待っているのは､薬物乱用頭痛である｡
薬物乱用頭痛に至った医療介護職は､結構な確率で離職する｡自分を守るためには当然の行動なのだが､辞められる側からすると､それこそ”頭が痛い”話である｡
医療介護現場の管理職は､頭痛もちの職員に｢あなたは月に､鎮痛薬を何錠飲んでいるの?｣と定期的にヒアリングしてみてはどうだろうか｡
15錠以上飲んでいるようなら､既に薬物乱用頭痛に嵌まっている可能性は高い｡
そして､病院に真面目に通っているにも関わらず薬物乱用頭痛に陥っている職員には､｢今の病院では､頭痛予防薬の工夫はしてもらっているの?｣と聞いて欲しい｡
延々と同じ薬だけを処方され続けている可能性があるから｡
40代女性 慢性頭痛(薬物乱用頭痛)
【頭痛初診時】
･これまでにない激しい頭痛)×
･薬物乱用)○
･天候左右性)○
･冷え症)○
･炭水化物依存)○
･過去に貧血の指摘)×
･肩こり)○
･不眠･朝の弱さ)○
･抑うつ気分)○
･歯ぎしり)○
･拍動性)○
･嘔気)○
･寝込む程か?)×
(問診)
夜勤もしている看護師さん｡
5年前から頭痛を自覚するようになったが､最初はロキソニンで対処出来ていた｡
2年前より起床時から頭痛がするようになり､○○クリニックを受診したところ片頭痛と診断された｡
初回で予防薬のミグシスと､発作時に飲むようにとエレトリプタンが処方された。エレトリプタンはロキソニンよりは良く効くが､ミグシスを飲み出してから気分の落ち込みがみられるようになったとのこと。
1ヶ月前から頭痛の頻度が増え毎日鎮痛薬を飲むようになったので主治医に相談したところ､｢予防薬はミグシスしかないし､エレトリプタンより効く専用薬もない｣と言われた｡
転医希望で来院｡
(診察)
慢性頭痛だが､○○クリニックでは毎回エレトリプタンが28錠処方されているので､これでは医原性に薬物乱用頭痛を作っているようなもの｡*2
片頭痛にはエレトリプタンで､緊張型頭痛にはイブで対処しているとのこと｡鎮痛薬の使用回数は恐らく､月に40錠を超えている｡
効いていないミグシスは中止｡
代わりに呉茱萸湯+ノイロトロピンを予防薬として毎日服用し､呉茱萸湯+五苓散を頭痛時の頓挫薬として試してみる｡最初から片頭痛が確かな場合は､エレトリプタン先行使用で｡
エレトリプタンの打率は100%とのことだが､毎日飲むのは大問題｡
ちなみに鉄欠乏は言われたことはないと｡眼瞼結膜蒼白なく血色は良好｡
自律神経調整目的で､星状神経節にスーパーライザー照射。全身が温かくなる感じあり。
2週間後
この数日はエレトリプタンを使っていない｡今日は軽い頭痛があるが､いつもだったら飲んでいるイブも不要なぐらいと｡
呉茱萸湯+ノイロトロピンが効き始めたか?ひとまず継続｡
起床時に既に頭が痛く日光が辛く感じるというのは､寝ている間に脳の過活動が始まっているということか｡
デパケンR100mgを眠前に開始｡
月経は整だが､頭痛は排卵日あたりで酷くなりやすいと｡
今回もスーパーライザー照射｡
2週間後
この2週間でエレトリプタンの出番は2回｡
1回は､夜勤明けに起きた頭痛に使って効いた｡イブの使用回数はゼロ｡
デパケンを飲んだ翌日から､朝の頭痛が消失と｡
｢信じられなかったです｣と驚いている｡
良かったですね｡
スーパーライザーは継続で｡
(引用終了)
www.ninchi-shou.com
www.ninchi-shou.com