外科の休日当番医をしていたある日、「投げ釣りで竿を振ったら、後頭部にルアー(疑似餌)の針が刺さって抜けなくなった」という小学生が来院した。
返しのついた3つの針のうち、2つが右後頭部に刺さっていた>_<
仕掛けの部分を切断しようと、まずは爪切りで針と仕掛けを繋ぐワイヤーを切断しようとしたがダメで、次に家庭用ニッパーで切断を試みるもダメだった。
嗚呼、「あの道具」さえあれば・・・・*1
局所麻酔をして針の刺入部位に小切開を加え、最終的には抜去出来たから良かったのだが、もっとスマートに抜いて上げたかった。
ゴメンよ、少年。
釣り針が刺さって抜けない場合の必需品
後日。
またしても当番医をしていたある日、「指に釣り針が刺さって抜けなくなった」という少年(前回とは別人)がやってくるという連絡を受けた時、遂にリベンジの日が来たことを悟った。
今回指に刺さっていた針は1つ。2つではないことにホッとし、まずは消毒と局所麻酔を行った。
釣り針が簡単に抜けないのは、針に「カエシ」が付いているためである。
このカエシがないと魚にエサを食い逃げされてしまうため、釣り人にとってはなくてはならない仕掛けなのだが、魚と医者にとっては迷惑なシロモノである。
泣きそうな顔をしている少年をなだめつつ、「大丈夫だよ。今回は準備万端だよ。」という心の声を押し隠し、この日のためにAmazonからお取り寄せしていた「あの道具」を厳かに取り出した。
このブツで・・・
カッターで針の「チモト」と呼ばれる部分を切断し・・・
針のお尻を押しこみ回転させると、少し離れたところから針の先端が出てきた。
その先端を掴み、回転させつつ引くと・・・
抜けた!
抗生剤と軟膏の処方を受けた少年は、ホッとした様子で帰って行った。
さようなら、少年。僕がサバが好きだということを覚えておいておくれよ(伝えていないけど)。
今回の教訓。
「釣り針は、引いてダメなら押してみろ(だたしワイヤーカッターは必須)」