アルツハイマー型認知症の診断で経過をみている80代の女性がいる。
1年半の経過で長谷川式テストは20点→22.5点と2.5点上昇。抗認知症薬はアリセプト3mgで非常に落ち着いている方。
ある日の外来で、「1週間ぐらい前に、頭を軽くぶつけたのよね〜」と話していた。何か症状があるわけではなかったが、ご家族が気にされていたので頭部CTを施行してみた。
硬膜下水腫の頭部CT
その画像が以下。
硬膜下スペースのdensityがほぼ髄液と同等なので、これは水腫と考えてよい。
このCTを撮影した時点では無症候性だった(症状は何も無かった)が、今後慢性硬膜下血腫へと移行していく可能性は考えられたので、予防的に五苓散5g/dayの内服を行うことにした。
五苓散で硬膜下水腫が消退
1ヶ月五苓散を内服して撮影した頭部CTが以下。
水腫は見事に消退していた。このCTを確認して、五苓散は終了とした。
このブログを以前から読んでいる方はお気づきかもしれないが、この方は頭部CTで不均衡な脳溝拡大を認めている。
脳溝の不均等拡大は、正常圧水頭症の画像所見の一つである。
この方が現在水頭症の症状を呈しているわけではないが、将来的に症候性となった場合、つまり歩行障害や尿失禁を認めるようになった時には、すぐにタップテストを行う必要がある。そして、タップテスト陽性であればLPシャント手術を積極的に検討する。
頭部画像撮影を行う際には、「今」の状態の評価のみならず、できる範囲で「未来」の状況を推測しておきたい。
この人はひょっとしたら、将来水頭症の症状がでてくるかもしれないな
と気をつけておけば、いざそうなった際に後手に回らずに済む。水頭症にならずに済めばそれに越したことはないし、誰も損はしない。
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