鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

認知症「救急」外来、そして解毒外来という当院の役割。

 今回紹介するKNさんは、飛び込みで来られた方である。

 

その日は既に予約がかなり入っていたため、受付スタッフは「出来れば、日を改めて予約を取って頂けたら・・・」と、後日の受診をご案内した。しかし、同伴の親戚の方が「どうしても今日じゃないとダメなんです。」と必死の面持ちで訴えていたので、気圧されるような形での診察となった。

 

結果、途中で最大1時間以上の待ち時間が発生し、他の予約患者に多大な影響が出てしまったのだが、その日にKNさんを診察した甲斐は確かにあった。あのままドネペジル10mgが続いていたら、大げさではなく命に関わっていたと思う。

 

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「他の患者さん達に悪いなぁ」と思いつつ、それでも飛び込み認知症患者さんを極力受け入れるようにしているうちに、当院は「認知症救急外来」、「解毒外来」といった様相を呈するようになった。

 

開院当初から意図していた訳ではないが、以前から減薬には積極的に取り組んできたので、こうなるのは必然だったように思う。

 

誰かがやらなければならないジャンルなので、それなりの使命感を持って淡々と取り組んでいる。

 

80代女性 物盗られ妄想の相談をしたら、ドネペジル10mgが処方された方

 

初診時

 

(現病歴)

 

90歳のご主人と二人暮らし。

 

昨日は嘔気で救急要請し、〇〇病院を受診。検査の結果異常なしで、胃薬が処方されて経過観察となっている。

 

2~3年前から物盗られ発言があるとのことで、夫が昨年末にかかりつけの〇〇内科に相談したところ、初回でドネペジル10mgが処方された

 

そのまま〇〇メンタルクリニックを紹介され、そこでは「うつ病」の診断でリフレックス3.75mgとサインバルタ40mgが処方された。


(診察所見)
HDS-R:25
遅延再生:5
立方体模写:OK
時計描画テスト:OK
IADL:1
改訂クリクトン尺度:24
Zarit:12
GDS:3
保続:なし
取り繕い:なし
病識:あり
迷子:なし
DLB中核症状: 3/4
rigid:なし
幻視:なし
FTD中核症状: 1/6
語義失語:なし
頭部CT所見:海馬、前頭葉、小脳萎縮
介護保険:要介護2
胃切除:なし
歩行障害:よろよろ
排尿障害:血尿で入院歴あり
易怒性:かつて物を投げることがあった
過度の傾眠:なし

(診断)
ATD:
DLB:△
FTLD:
その他:

(考察)

 

明らかにドネペジル過剰による消化器症状だろう。中止。徐脈はなし。心筋梗塞や狭心症の既往はなく、処方根拠が不明なスタチンも中止。


泣き笑いの表情で口元を抑えつつも、受け答えはしっかり出来る。HDS-R25/30に遅延再生5/6、視空間認知を保ち、保続はなく病識がある。ATDはないだろう。DLBは留保。

 

強いご希望でかかりつけ医引っ越しとなった。同伴の親戚の方(看護師)は当方の講演会参加経験あり、「何かあったら連れてこようと思っていた」とのこと。

 

ご主人は90歳ながらもお元気ではあるが、薬剤調整の効果判断や通院の付き添いは果たして可能かどうか。無理なら、最低限の解毒後に訪問診療へ繋ぐことも検討を。

 

お子さんは皆さん遠方にお住まいで、助力はあまり期待出来ない。

 

(引用終了)

 

☆2019年1月21日追記

 

2回目の外来で症状改善傾向を確認後に、往診できるクリニックにバトンタッチとなった。

 

そして先日、初診時に同伴された親戚の看護師さんから、「抗認知症薬を完全に止めてから、今は以前の様に元気に暮らせています。ありがとうございました。」と御報告を頂いた。

 

デトックス

 

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