フランスが重要な方針転換を行った。
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抗認知症薬は、「アルツハイマー型認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない」という現実
6月1日、フランス厚生省(社会問題・健康省)はプレスリリース(※1)を発表。「現在、アルツハイマー病の治療のために使われている薬(※2)を、8月1日より医療保険のカバーから外す」としました。
今回、対象となった薬は、アルツハイマー病で認知症になった人の症状の進行を抑制するものとして、日本でも広く使われています。もちろん医療保険でカバーされ、必要な人は1割~3割程度を自己負担すれば手に入れることができます。
もし医療保険から外れると、手に入れるには全額が自己負担となり、本人が支払うお金が高額になります。(上記リンクより引用)
一部の国では患者増加に歯止めがかかったという報告があるが、アルツハイマー病が今後も世界が取り組むべき最重要課題の一つであることは間違いない。
その中でのフランスの今回の決定は波紋を呼びそうだ。
世界中でこれまでに発表された研究を調べた結果、薬を使うことで施設への入所を遅らせたり、病気が重症化するのを抑制できたりなどの「良い影響」を示す証拠は十分ではないとしました。
その一方で、消化器系や循環器系などへの有害事象は無視できないとして、これらの薬を「医療保険でカバーするのは適切ではない」と勧告しました。(上記リンクより引用)
限られた医療資源をどう配分するかは常に悩ましい問題だが、これまでは抗認知症薬に多くの資源配分を行ってきたけれども、メリットとデメリットを按分した結果、デメリットが上回るとフランスは判断したということだ。
現在、国内でアルツハイマー病の治療薬として用いられている薬の添付文書には「本剤がアルツハイマー型認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない」と断り書きがされています。(上記リンクより引用)
抗認知症薬を販売しているメーカーは、「病状の進行抑制」と「病態の進行抑制」という言葉を使い分けているが、恐らく医療介護関係者を含め世間の多くが、抗認知症薬の使用は「病態の進行抑制」と捉えている可能性がある。
抗認知症薬には、認知症を病理学的に修飾する力はない。つまり、本質的に病態進行抑制効果はない。
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「そうであれば、ケアに力を入れる方が理に適っているだろう」と考える向きがあって当然で、それを国家ぐるみでやろうという点で今回のニュースは画期的と言える。
抗認知症薬中止で病状が悪化した場合の救済措置は?
ただし、今現在、抗認知症薬で効果が出ている人達はどうなるのだろうか。そのことについては残念ながら、今回のニュースでは触れられてはいない。
医療保険から外されることになれば、抗認知症薬が一斉にストップされるであろうことは想像に難くないが、どれほどの混乱が起きるのかはちょっと想像出来ない。急激に意欲や活気の低下をきたす患者は、少なからず出るだろう。
どうしても抗認知症薬を使いたい場合には自費で購入することになるが、フランスの医療保険の自己負担率はちょっと分からないのだけれども、全額自費で長期継続出来る人はそうそういないことは確かだろう。
以下、より穏便な抗認知症薬の扱い方について私見を述べてみる。
抗認知症薬を止めて病状が悪化すれば、再開することを医療保険で認める。
抗認知症薬が効くか効かないかは使ってみないと分からないので、新規患者が規定量まで抗認知症薬を試し、効果があれば保険処方を認める。効果がなければ中止する。
医療保険で抗認知症薬を継続する場合、エビデンスのある「1年」限定とする。1年以降は例えばドネペジルであれば5mgから3mgに減らすことを義務づける。減量で病状悪化があれば戻し、悪化がなければ3mgで維持。これを毎年繰り返す。基本的に、減量後に増量はしない。漸減終了を目指す。
無理のないやり方だと思うが、如何だろうか。
恐らく今回のフランスの決断は大きな混乱を生むだろうが、その混乱の中から今までにない良い認知症対策が産まれることを切に望む。
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