頭痛と熱発を呈した高齢者で、たま〜にみかける疾患をご紹介。
環軸椎偽痛風のこと
痛風という病気がある。尿酸が関節で結晶化し、強い痛みを伴う炎症が起きる病気である。足の親指の付け根が赤く腫れるのが典型例。壮年男性における発症が9割方を占めると思われるが、閉経後の女性でも時に見られる。

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また、偽の痛風と書いて偽痛風(ギツウフウ)という病気もあり、脳卒中の急性期ではしばしば見かける。これは、ピロリン酸カルシウムが関節に貯留して起きるもので、痛風と似たような症状を呈するものの、痛風のように激烈に痛がる方はそう多くないように感じる。高齢者に多く、男女差はない。
Crowned Dense Syndrome(以下CDS)とは、環軸関節(第一頸椎と第二頸椎で形成される関節)で起きる偽痛風のことである。
70代男性 後頚部痛と39℃の熱発で紹介
数日前から肩が痛くなり、その後首の後ろが痛くなり、更に熱が出てきた。採血を行ったところ、白血球10560にCRP10.6と炎症反応が高く、項部硬直と併せて髄膜炎が疑われます
とのことで紹介があった。
意識は清明〜JCS1、熱でボーッとした印象。項部硬直は微妙。Jolt試験(首を左右に振って痛みが増悪するかをみる検査)は陽性というか、首が痛くて振れない。ケルニッヒ徴候(膝関節の進展で髄膜刺激徴候を判断する検査)は陰性。
念のために腰椎穿刺を行ったところ、細胞数は3で正常。髄膜炎は否定的と考えた。
肩の痛みから始まった、という病歴からCDSを疑って、頭部〜頚部までCTを施行。画像は以下。

CDSの典型画像は、歯突起周囲を取り巻くように石灰化病変がある。今回のケースでは、歯突起腹側に中等度石灰化を認め、病歴と併せてCDSと判断した。
ロキソニン3錠3X/day内服に良く反応して、入院翌日には解熱し痛みも改善。1週間後の採血で炎症反応が消失したことを確認して退院となった。
高齢者で肩周囲から始まる痛みに頭痛と熱発、炎症反応上昇を認めた時には、慌てて「髄膜炎か?とりあえず抗生剤開始!」とする前に、CDSの可能性を考えてみよう、というお話しでした<(_ _)>
軸椎 - Wikipedia