このようなニュースを見かけた。
「日本初、西友が日本糖尿病協会監修の健康配慮型弁当を発売 - BIGLOBEニュース」
載っていた写真はこちら。

以下、引用を交えて考察。
カロリー控えめ、バランス良くの意味とは?
カロリー控えめ、各栄養成分をバランス良くとりいれながらも、楽しみながら食事をしていただけるよう、野菜中心のおかずを品数多く揃えました。加えて、腹持ちを考え、充分にご満足いただける量の雑穀米を入れるなど、おいしさと食べごたえを実現するため工夫を凝らしています。また、自社工場で製造することで、398円という、関連商品に比べて圧倒的な低価格を実現しました
「カロリー控えめ」と書いている時点で、恐らく「諸悪の根源はカロリー」という栄養思想なのだろう。そして、「各栄養成分をバランス良く」という記載。
日本糖尿病協会の見解
バランス良くとは「炭水化物・脂質・タンパク質」のバランスのことだろうか。この弁当を監修した日本糖尿病協会のHPを見てみたところ、
食事に関して、「多く食べればよいもの」という考え方はあまりありません。 摂取エネルギー(カロリー)がオーバーにならない、脂肪をとりすぎない、食物線維をしっかりとる、規則正しい食生活を守る、多くの品目をバランスよくとる、などが大切です。(こちらより引用)
という記載を見つけた。「糖尿病にならないためにはどうしたらよいのでしょうか?」という問いに対する答えとして書いてあるので、日本糖尿病協会は
カロリーの摂りすぎ、脂肪の摂りすぎで糖尿病になる
という見解なのだろう。
日本糖尿病学会の見解
ちなみに、日本糖尿病学会が推奨する糖尿病における栄養摂取のバランスは
栄養素摂取比率について 糖尿病における三大栄養素の推奨摂取比率は、一般的には、炭水化物 50~60%エネルギー( 150g/日以上 )、たんぱく質 20%エネルギー以下を目安とし、残りを脂質とする。この炭水化物の推奨摂取比率は、現在の日本人の平均摂取比率がこの範囲にあり、他の栄養素との関係からも妥当と考えられる (2013年3月【PRESS RELEASE】日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言より)
このようになっている。「糖尿病における」と断っているが、下線部分の「日本人の平均摂取比率がこの範囲にあり」を読む限り、糖尿病に限らず一般的な食事の目安として、炭水化物で50〜60%のエネルギー摂取を推奨していると思われる。
つまり、「糖尿病だろうがそうでなかろうが、一日の摂取エネルギーの50〜60%は炭水化物で摂りましょう。糖尿病になったらカロリーは抑えるが、炭水化物の比率は維持しましょう」ということみたいだ。
実際のお弁当の中身は?
- エネルギー 464kcal
- タンパク質 19.8g (79.2kcal)・・約17%
- 脂質 15.1g (135.9kcal)・・約29%
- 炭水化物 62.2g(248.8kcal)・・約53%
()内がカロリー量。食物繊維と分けて記載されていなかったので、糖質量は不明。なので、ここでは炭水化物≒糖質としてカロリー計算してみたところ、合計463.9kcal。
それぞれの栄養素の、全体カロリーにおけるパーセンテージも書いてみたが、見事に糖尿病学会推奨のエネルギー摂取比率になっている。
この弁当で健康になれるかどうか?
白米ではなく雑穀米を使用している点は、かろうじて評価出来る。脚気を例に挙げるまでもないが、精製された穀物は、栄養という意味ではpoorである。
普段のエネルギー摂取比率が炭水化物60%以上で、かつ肥満の人であれば、この弁当で体重減量は可能かもしれない。
2型糖尿病の人にはどうだろうか?
この弁当を食べ続ける限りは、恐らく糖尿病が治ることはないだろう。血糖を唯一上昇させる栄養素である糖質をこのバランスでとり続ける限り、糖尿病の改善は難しいと言わざるを得ない。
自分だったら、この弁当を食べるだろうか?
糖質制限で健康を維持している自分が、この弁当を買って食べることはまずないです。恐らく体力ガタ落ちです。
結論
この健康配慮型弁当で健康になれる人は、残念ながらごく一部だと思う。
結局問題は「コスト」であろう。
「圧倒的な低価格を実現しました」と誇らしげに書いてあるが、健康を売りにしていても結局は値段が高ければ中々食べて貰えない。では値段を下げるのに最も適した食材は何であろうか?
それは、穀物である。
「安上がりの穀物でカロリーの60%を摂りましょう」という栄養指導が、今の日本のスタンダードである。そして、増え続ける糖尿病。
皆さんは、この現実をどう考えるだろうか。
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