スタチンとは?
前回はグルテン過敏症について紹介したが、今回は主にスタチンについて述べていく。
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今回の記事を書いている時に、タイムリーにも飛び込んできたのが下記ニュース。最後で少し触れてみる。
コレステロール制限必要なし=食事摂取で新見解―米当局 (時事通信) - Yahoo!ニュース
医者も患者さんも、なぜコレステロールを常に気にするのか?
コレステロールを下げる薬剤の代表、スタチン。
リピトールやクレストールなど、かつては世界で最も売れた薬の一つであり、現在でも高い売り上げを続けている。
投薬効果が採血結果で分かりやすく現れるので、患者さんや医者が喜びを共有出来る(?)薬である。
医者:「〇〇さん、今回の採血では悪玉コレステロールの数字が20下がっていましたよ(^^)」
患者:「本当ですか?良かったです(^^)」
このような会話は、毎日のように日本各地の外来で交わされていることだろう。
しかし、実際にはどれほど良い働きをしているのか?
個人的にはここ数年、スタチンのメリットについては懐疑的である。80歳を超えてスタチンを内服中、特に認知症患者さんにおいては、心筋梗塞の既往の無い人は減量中止に持っていくようにしている。今のところ何も問題はない。
なぜみんな躍起になってコレステロールを下げようとするのか。それは、患者さんの側からすると
という考えがいつの間にか刷り込まれているからではないか。そして、医者の側からすると、
- 心筋梗塞の二次予防のためには積極的にLDL-Cを下げなければいけない
と学生時代に教えられ、製薬会社からプッシュされ、学会ガイドラインにも銘記されているからだろう。
果たしてそれは真実か。
コレステロールの大事な役割とは
「悪玉」として有名なLDLとは低比重リポタンパク質のことであり、コレステロール分子と複合体を為して、体内各器官にコレステロールを輸送する。つまり、コレステロールの運び屋さんであり、単体としてはコレステロールではない。
実は、LDL=悪玉ではなく、酸化されたLDL=悪玉なのであり、そしてLDLを酸化させるものの一つが糖質なのである。糖質の過剰摂取にしっかり気をつけていれば、コレステロールを気にし過ぎる必要はないのである。
また、細胞膜の主要構成成分であるコレステロールはニューロンにとっても必要な栄養である。
この栄養を運んできてくれるのがLDLである。スタチンで強力にLDLを下げてしまうと、認知機能が悪化してしまう恐れがある。
ちなみに、なぜ個人的にスタチンの効果に対して懐疑的なのかというと、
「高齢者が枯れていく」
というイメージを、普段の臨床現場で感じていたからである。この辺りの感覚については、循環器の先生方の意見も是非聞いてみたいところである。専門科が違えば、同じ薬に対して抱く印象もかなり違うからである。
様々なデータをどう読む?
日本循環器学会ガイドラインでは、スタチンはグレードAの推奨である。以下、「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年)」より抜粋。
クラスI
1.高LDLコレステロール血症にはスタチンを投与する. (エビデンス A)
2.高LDLコレステロール血症にはスタチンに加え高純度EPA製剤も考慮する. (エビデンス B)
クラスIIa
1.平均的なLDLコレステロール値の患者にスタチンを投与する. (エビデンス A)
しかし、高いコレステロールがむしろ健康によいことを示すデータも数多く提示されている。以下に一部掲載。
- 85歳を超えた高齢者は、コレステロール値が高いほど健康と思われる(Rebecca West, et al., “Better Memory Functioning Associated with Higher Total and Low-density Lipoprotein Cholesterol Levels in Very Elderly Subjects Withou t the Apolipoprotein e4 Allele,” American Journal of Geriatric Psychiatry 16, no. 9 (September 2008): 781-85.)
- 超高齢者では総コレステロール値が39ポイント上昇すると、死亡リスクは15%低下する(A. W. Weverling-Rijnsburger, et al., “Total Cholesterol and Risk of Mortality i n the Oldest Old,” Lancet 350, no. 9085 (October 18, 1997): 1119-23.)
極めつけと思われるのが、以下。
- 飽和脂肪酸を摂取することは、冠動脈疾患、脳卒中、心血管疾患のリスク増大とは関係がない(P. W. Siri-Tarino, et al., “Meta-analysis of Prospective Cohort Studies Evaluating the Association of Saturated Fat with Cardiovascular Disease,” American Journal of Clinical Nutrition 91, no. 3 (March 2010): 535-46)
ちなみに、コレステロールは脂肪(脂質)の一種。脂肪は4種類に分けられるが、次のような理解で良いと思う。
- 脂肪酸:すぐに使えるエネルギー
- 中性脂肪:貯蔵用のエネルギー
- コレステロール:細胞膜の構成成分で胆汁酸やステロイドの原料にもなるエネルギー
- リン脂質:細胞膜の構成成分で、生体内シグナル伝達にも関わるエネルギー
スタチンの危険性について
効かないだけならまだしも、もし健康へ悪影響を及ぼすものであったとしたら・・・
- 閉経後の女性において、スタチンを使用していた群は2型糖尿病のリスクが48%上昇した(Effects of Statins on Energy and Fatigue With Exertion: Results From a Randomized Controlled Trial FREE Beatrice A. Golomb, MD, PhD; Marcella A. Evans, BS; Joel E. Dimsdale, MD; Halbert L. White, PhD)
- スタチンはテストステロン値を下げ、性欲減退に繋がる(G. Corona, et al., “The Effect of Statin Therapy on Testosterone Levels in Su bjects Consulting for Erectile Dysfunction,” pt. 1, Journal of Sexual Medicine 7, no. 4 (April 2010): 1547-56)
スタチン内服により2型糖尿病を発症するリスクが高まる。2型糖尿病がアルツハイマー型認知症のリスクを高めることを考えると、
「スタチン内服はアルツハイマー型認知症になるリスクを高める」
という結論に達するのではないだろうか。コレステロールは神経細胞膜の重要な構成成分であることを考えると、これはアルツハイマー型認知症だけには止まらない話とも言える。
また、テストステロン値は情動と深く関係し、その値が低い患者の死亡リスクはより高くなる、というデータがある。
*1
結論
恐らくスタチンは多く出されすぎた薬であり、場合によってはそのメリットよりもデメリットが上回る可能性がある薬だと考える。
冒頭のニュースに戻る。
健康維持のため食事による取り過ぎには注意が必要とされているコレステロールについて、米当局は19日、摂取量を制限する必要はないという新たな見解を発表した。「コレステロールは過剰摂取を心配する栄養素ではない」と明言している。
米厚生省と農務省が設置した「食事指針諮問委員会」が報告書を公表した。各種調査結果から「食事によるコレステロール摂取と(動脈硬化などの病気の危険を増すこともある)血清コレステロールの間に明らかな関連性はない」と結論付けた。
なぜこのタイミングでこのようなニュースが出てきたのかは、非常に興味深い。
頭をよぎるのは
ディオバン事件だが、今年はスタチン絡みの論文の不正問題が出てくるのではないだろうか?
本文中で印象に残った、フラミンガム心臓研究に関わるジョージ・マン博士の言葉を引用して、今回は終了。
脂肪やコレステロールを大量に摂取することで心臓疾患が引き起こされる、という仮説が間違っていることは何度も示されている。しかし、プライドや利益、偏見といった理由から、科学者や資金集めの企業や食品会社、それに政府機関までもが相変わらず仮説を検証し続けている。人々は今世紀最大の健康被害にあっている
過剰なプロモーションには要注意ということですね。
※注)今回の内容は、ほぼ100%「いつものパンがあなたを殺す」に準拠していますが、ごくわずかに私見を入れています。
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