[どんな病気か]
肺のほとんどすべての肺胞の中に、カルシウム塩(リン酸カルシウム塩、炭酸カルシウム塩)が層状に沈着する病気で、劣性遺伝(れっせいいでん)します。
病気の初期は、胸部X線写真をみると肺がカルシウム塩でまっ白になっているにもかかわらず、ふしぎなことに、ほとんど自覚症状がないという特徴があります。
このような理由で、健康診断で偶然に発見される場合がほとんどです。
ただし、自覚症状がないといっても、何年かして肺胞の壁の線維化が進行すると、からだを動かした後に、呼吸困難やせきなどの症状が現われてきます。
[原因]
常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたいれっせいいでん)という形式で遺伝します。
劣性遺伝ですから、親に病気があっても、かならずその子どもが病気になるわけではありません。
原因は不明ですが、カルシウム塩は肺胞の壁でつくられ、肺胞の中へ分泌(ぶんぴつ)されて蓄積します。
これは、幼少のころから徐々に始まり、おとなになってから、はっきりした異常として完成します。
[検査と診断]
病気が初期のうちは、自覚症状がほとんどないのが特徴です。大部分の人は健康診断のときに胸部X線写真を撮り、肺全体がすりガラスのように白く濁っていることで発見されます。
診断を確定するには、開胸肺生検(かいきょうはいせいけん)という方法で肺の一部をとり、顕微鏡で観察して、肺胞にカルシウム塩の層状の沈着を証明しなければなりません。
[治療]
カルシウム塩を取り除くような根本的な治療法はありません。せきが出たら、せきをとめるという、症状を抑えるための対症療法が中心となります。
日常生活の注意としては、かぜをひかないように注意します。かぜをひいた場合は、十分にからだを休めて早く治すような、一般的な注意が必要です。
(コトバンクより引用終了)
珍しい病気で、これまで日本では100例ほどの報告しかないようだ。
60代女性 肺胞微石症
(現病歴)
数日前に、冷や汗が出るほどの頭痛を自覚。改善が無いため受診。歩いてこられた。
(診察時)
意識清明で、動眼神経症状を含め神経学的脱落所見なし。
頭部CTでくも膜下出血は認めないが、左後交通動脈分岐部の拡大を認めた為、MRIを施行。同部位に脳動脈瘤を認めた。
かつてないほどの頭痛を自覚されていることから、CTで描出されないほどの微小出血(minor leak)をきたした切迫破裂状態と判断。同日に入院、緊急で動脈瘤のコイル塞栓術を行った。
その際の術前胸部レントゲンで、肺胞微石症が見つかった。
麻酔科医師による厳重な呼吸管理の下で、無事にコイル塞栓術を終えることが出来た。
認知症とは関係ない症例だが、初めて見る肺胞微石症のレントゲン写真であったので提示してみた。
上記引用にもあるように、肺移植以外の根本的な治療法はないが、進行は極めて緩徐な病気のようだ。
ちなみに、たまにではあるが歩いて病院に来るくも膜下出血の患者さんがいるので、経験したことの無い頭痛というキーワードには要注意である。