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鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

確定診断は出来ずとも、治療は続く

認知症の症例 認知症の症例-嗜銀顆粒性認知症(AGD)

初診時の診断は正しいか?

 
そうもいかないことの方が多いのが、今の自分の力量である。
 
89歳女性 アルツハイマー型認知症?AGD?
仲の良いご姉妹で一緒に暮らしている

 

 

 

前頭側頭葉変性症とアルツハイマー型認知症両方の要素
HDSR施行時に、保続や取り繕いあり。これはATDを示唆。しかし振り返り動作も多く見られた。これはFTLDによく見られる。
 



 
長らくアルツハイマー型認知症の診断で、他院で外来フォローされていた方。2009年11月にアリセプト5mg、病状進行に伴い2012年8月にアリセプト10mgに増量。それでも認知症が進行してくると紹介あり。
 
2013年4月12日初診。以降の経過を当時の記録に沿って再現してみる。
 
 
(引用開始) 2013年4月12日ATDで外来フォロー中。穏やかで朗らかな方。妹さんとお二人暮らし。2009年11月にアリセプト5mgとなり、10mgに増量したのが2012年8月。最近、人の名前がなかなか出てこないとの妹さん情報。電話対応が難しくなってきたらしい。イクセロンパッチへ切り替えて見る。いずれは少量メマリーも。
 
 

5月10日

易怒性が落ち着いてきた。意欲がまして、家事に積極的になってきた。
妹さんは大喜び。本人はあまり変わらないけどねー、と。
今回から9mgにイクセロンパッチ増量。
スクリーニングは9点で、図形模写は完璧。

 
 
6月7日

イクセロンパッチを9mgに増量してから掻痒感が強く、4.5mgに減量。

7月5日

まだ痒く、しばらく貼るのを止めていた。
隔日4.5mgで再開。次回からはヒルドイドも使用する。

8月1日

やはり掻痒感強く、イクセロンパッチは断念。
メマリーを開始。

9月27日

メマリーを10mgに増量。今のところ、目立った変化はない。
ニコニコ。ケタスは終了でもいいのかな。

10月25日

メマリー増量で少しめまいとふらつきが増えたかな?
当面10mgで維持する。

HDSR17点
遅延再生4点
語想起0点
FTLDセット3点

子供のようなはしゃぎっぷりと仕草が、以前より露骨になってきた。
FTLDの要素が増しつつあるのかな?
語想起では保続あり。
 
(ここからしばらくは目立って変化はなく・・・)
 
平成26年1月17日

妹さん曰く、物忘れ進行が目立つと。整容は保っている。ぱっと見は今まで通りだが。

もう一度、イクセロンパッチにtry。

3月14日

イクセロンパッチはやはりかぶれるので無理だった。
アリセプトに戻す。

(引用終了)
 

結局、この方の診断は?

 
 
当初はアルツハイマーで考えていた。画像所見はアルツハイマーに大きく矛盾しないが、若干右優位の萎縮ではあった。しかし長谷川式テストの点数で遅延再生が4点と比較的高かったので、典型的なアルツハイマーとは言いがたい。アリセプト10mgを許容し得ていたということは、少なくとも病理学的にはアルツハイマーでアセチルコリンは不足していたと考えるべきなのか。

イクセロンパッチに変更したところ、妹さんからするとADLが向上し著効した印象だったのだが、掻痒感で脱落したのは残念。最初からヒルドイドクリームを併用しておくべきだったと反省。
その後再度イクセロンパッチに挑戦したが、無理だった。
 
1年間経過を観察してきて急激な悪化はなかったと思うが、徐々に子供っぽさが増していったのが印象的だった。当初の画像で若干だが右優位の側頭葉内側萎縮もあり、アルツハイマーから前頭側頭葉変性症へと移行しつつあったのかもしれない。若しくは最初からAGDだったのかもしれない。AGDや前頭側頭葉変性症については、またの機会に。
 
 
最終処方)
 
アリセプト5mg+メマリー10mg 抑制系は不要
 
最後は当方の転勤でお別れとなった。
今後、メマリー10mgがジワリと支えてくれることを願っている。
 
今回はこれで終了。
 
(用語説明)
 
FTLD・・・前頭側頭葉変性症
AGD・・・嗜銀顆粒性認知症
遅延再生・・・3単語を覚えてもらい、数分後に再度聞き直す。この点数が低い場合、それは近似記憶の低下を示唆する。ATDでは低下していることが多い。

 

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