鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

周辺症状制御の成功例、フェルガードの威力

フェルガード+グラマリールが著効 

 

95歳女性 アルツハイマーか軽度認知機能障害か。フェルガードが著効した。

 

初診時

 

要介護1。定期的に訪れる娘さんがしばらく一緒に住んで様子をみているが、ADLはほぼ自立している方。夕方になるとソワソワする、怒りっぽくなると来院。

 

  • 長谷川式テスト14点
  • 遅延再生0点、後半失点パターン
  • 立方体模写OK
  • 時計描画OK
  • 筋固縮なし
  • とても穏やかに話す方

 

長谷川式テストの失点パターンや中等度海馬萎縮をみると、アルツハイマーといっても矛盾はない。しかし、要介護1(膝や腰が要因)ではあるがADLはほぼ自立しており、遂行機能障害などはないので、MCIと呼んでも差し支えない気もする。

 

このような場合、まずやるべき事は「ご家族の希望を聴く」こと。

 

ご家族の希望

 

  • 高齢なので、薬を使うのであれば極力少なくして欲しい
  • 記憶力は今のままで良い、夜が穏やかであってほしい

 

考えたこと

 

  • 病型診断はMCI〜ATDかな。さほど妄想を伴わない攻撃性上昇にはグラマリールで対応してみよう。25mgをお昼の15時に内服
  • ご家族が認知面対策で健康食品などを幾つか購入してあげている。ご希望があれば、それらを整理してフェルラ酸含有食品を勧めてみよう

 

実際の処方

 

  • グラマリール25mg 15時に1錠内服
  • フェルガード100M 2包2X

 

結果

 

2週間後に再診。診察時の印象は初診時とさほど変わりなく見えたが、娘さん曰く、

 

  1. 夕方からのソワソワや怒りっぽさが無くなった
  2. 朝の連続ドラマの、前日の内容を説明出来るようになった

 

と大喜び。本人は「そんなに変わらんけどね〜」と言いつつも、少し嬉しそうであった。

 

1に関しては、グラマリールが効いてくれたのであろう。中には、周辺症状が上手く制御されることで中核症状(この方の場合は記憶障害)も改善しているように見える方はいる。

 

しかし、今回の2に関してはフェルガードの関与を強く感じた。というのは、

 

  • グラマリールの内服開始より後でフェルガードを開始
  • ソワソワは、グラマリール開始ですぐに改善
  • 記憶の改善はフェルガードを開始して少ししてから

 

という経過であったからだ。フェルガード類では、このように比較的短期間での中核症状改善を経験することはままある(周辺症状改善を経験することもある)。

 

まとめ

 

この方の場合には、グラマリールのみでもご家族は満足されただろうと思う。実際、同様のケースでグラマリールのみで穏やかに過ごせるようになった方は多い。

 

ご家族がたまたま健康食品やサプリメントに興味を持っておられたので、フェルラ酸含有食品をお勧めしてそれが効を奏した。

 

喜んだご家族からは写真掲載の許可も頂いた。

今後は、怒りっぽさが増した場合にはグラマリールを少し増量し、フェルガードが支えてくれることを期待している。

 

今回はこれで終了。