写真掲載の許可を頂いた症例。レビー小体型認知症と慢性硬膜下血腫合併が劇的に改善した例をご紹介。
88歳男性 レビー小体型認知症+慢性硬膜下血腫

元々近医で脳梗塞後遺症及びパーキンソン症候群との診断でフォローされていた。最近傾眠傾向で、頻繁に転倒する、約2ヶ月間でHDSRが12点→4点へ低下するなど認知症の進行を認める、などの訴えがあり紹介受診。
診察時
- 視線は合わず、うなだれ会話不可
- 歩行不可、車いす
- 体幹軽度傾斜
- 軽度右片麻痺
- HDSR施行不可
- 両上肢に軽度歯車用筋固縮
頭部CTで左慢性硬膜下血腫を認めたため、血腫の影響によるものであろうと考え、手術で血腫を除去したのだが目立った症状の改善がなかった。
再度初診時の症状を洗い直し、ご家族へ問診をし直すと、「調子の波が普段から大きかった」・「急に意識が途切れることがあった」・「風邪薬でよく眠くなっていた」などの情報が得られた。DLBスコア8点。
また、慢性硬膜下血腫による脳への圧迫が解除された後の頭部CT、MRI画像では両側放線冠にビンスワンガーtypeの虚血像、基底核には微小出血痕が散見された。
これらのことから、脳梗塞後遺症→レビー小体型認知症を合併→歩行困難となり頻回に転倒し頭部を打撲→慢性硬膜下血腫を合併、こういう流れであったのではないかと考えた。ここで脳梗塞後遺症→歩行困難としてしまうと治療の方向性を間違えてしまうと思う。
実際の治療の流れ
①脳梗塞対策で処方されていたバファリン81を、嚥下面への効果も期待してプレタール50mgに変更。常用量の1/4の量だが、易転倒性や微小出血痕が多発していることを考えると止むを得ない。
②恐らくパーキンソン症状に対して出されていたであろうアーテンを中止。DLBの可能性を考えると、認知面に対しては逆効果となり得る。
③幻視や徘徊もあるようなので、まずは抑肝散で症状軽減が得られるか確認しよう。
これらの結果、2週間で幻視や徘徊が軽減した。ここでイクセロンパッチを導入し、徐々に増量。
最終的には、杖歩行可能、ADLほぼ自立となった。
最終処方)
- イクセロンパッチ13.5mg(ヒルドイドクリーム併用)
- 抑肝散5g2x
- プレタール50mg
高齢者は様々な病気を合併するが、認知症領域においても複数の認知症関連疾患を合併していることは非常に多い。
今後同様のケースを随時upしていこうと思う。今回はここまで。
(略語説明)
ADL・・・日常生活動作
CSDH・・・慢性硬膜下血腫