鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

病型診断より症状改善(周辺症状)を優先するべき。アドオンしたメマリーが効を奏した一例。

病型に当てはまらない症例

76歳女性。くも膜下出血のクリッピング術後で認知症も合併。大幅改善。

 

元々通常外来に通っていらっしゃった患者さん。

 

ご家族とご本人から、モザイクなしの画像使用の許可を頂いた。くも膜下出血のクリッピング術後で外来通院中であったが、徐々に同居の夫に対する金銭妄想や嫉妬妄想が出現した。

診察所見

  • 上肢rigidなし
  • 歩行はスムーズ
  • HDSR17点(遅延再生4点 野菜語想起0点 5物品記銘3点)
  • 立方体模写可
  • 時計描画は位置がやや異常
  • ピックスコア1点、DLBスコア1点

 

診察中は笑顔、しかし退室時に目つきが変わり夫に対する妄想を話しだす。

 

妄想出現時は人が変わったようになり、夫を罵倒する。その後は比較的ケロッとしている、とのこと。

 

病型診断は困難であったが、基底核の石灰化や、くも膜下出血及び動脈瘤手術による左側頭葉へのダメージ、スイッチ易怒などからDNTC〜FTLD(Pick)の路線で考えておき、まずは陽性症状のコントロールを心がけることにした。

 

以下に使用薬剤の変遷を記載する。

 

介入前から内服していた抑肝散とデパスは終了した。朝にコントミン12.5mg、夕にウインタミン6mgを入れることで妄想はだいぶ改善。

 

その後メマリー5mgを開始。病識が出てきたが依存心も増え、やや傾眠がちになった。メマリーは開始3ヶ月目で10mgに増量し、傾眠対策として夕方のウインタミンを終了した。

 

セロクエル12.5mgx3+メマリー10mgでまずまず落ち着いていたが、血糖値及びHbA1c上昇を認めたためセロクエルは中止。ウインタミン8mgx2に置き換えた。

 

すると、妄想は全く言わず、依存心は減って積極的に家事を行うようになった。介入から約半年で、家族から「ベストな状態」と評価を頂いた。

 

ただ、この頃から錯語がやや目立つようになったので、左側頭葉へのダメージを踏まえた「DNTC〜FTLD」と考えたことは、あながち見当違いではなかったのかもしれない。また、陽性症状がやや改善してからのメマリー投入及び10mg維持が功を奏したとも考える。

 

今回はこれで終了。

 

(略語説明)

  • HDSR・・・長谷川式簡易知能評価スケール
  • ATD(AD)・・・アルツハイマー型認知症
  • DLB・・・レビー小体型認知症
  • FTLD・・・前頭側頭葉変性症
  • DNTC・・・石灰化沈着を伴うびまん性神経原繊維変化病

 

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