外来で患者さんやご家族に質問されることが多いので、まとめておきます。
動物の体内に存在するリン脂質の一種
プラズマローゲンというのは抗酸化作用を持った脂質の中のリン脂質の一種で、グリセロリン脂質の一つです。プラズマローゲンは哺乳動物の全ての組織に存在し、人体のリン脂質の約18%を占めます。特に、脳神経細胞、心筋、リンパ球、マクロファージ等に多く含まれ、抗酸化能など細胞の根元的な機能をコントロールする事が分かってきました。(レオロジー機能食品研究所)
細胞膜を構成するリン脂質の一種であるプラズマローゲンには
- イオン輸送(生体膜を横断して選択的にイオンが移動すること)
- コレステロール排出(プラズマローゲンが少なくなると、HDLコレステロールの機能が低下する)
- エイコサノイド前駆物質(アラキドン酸とEPAから生成される生理活性物質の総称)
- 膜融合
- 抗酸化作用
- 血小板活性化因子前駆物質
このような働きがある。
エイコサノイドとは?
脂肪酸代謝では、アラキドン酸とエイコサペンタエン(EPA)からさまざまな生理活性物質が生成される。この生理活性物質をエイコサノイドと呼び、プロスタグランジン、トロンボキサンおよびロイコトリエンが含まれる。これらは、「炎症」と深く関わる物質である。
代謝経路などの詳細は割愛するが、エイコサノイドについて簡単にまとめたのが以下。
- エイコサノイドは炎症に関わるホルモン様物質である
- ω-6経由のエイコサノイドは炎症を誘発する
- ω-3経由のエイコサノイドは抗炎症作用を有する
ω-3やω-6とは、食事で摂取する必要がある必須脂肪酸のこと。不飽和脂肪酸(常温で液体の油)である。
べにばな油やひまわり油、サラダ油や大豆油などのω-6系油は、炒め物や揚げ物などで多用されている。普通に生活していると、どうしてもω-6系油の摂取に偏りがちとなり、炎症の起きやすい身体となる。慢性的な炎症は万病の元である。
ω-6系油を減らし、ω-3系油を意識的に増やす工夫が大事である。具体的には、シソ油やエゴマ油を加熱せずに用いる(サラダドレッシングなどで)ことをお勧めする。また、加熱調理に使うのであれば、ココナッツオイル(飽和脂肪酸)やオリーブオイル(ω-9)が良い。
抗酸化作用から連想するのは?
抗酸化作用を持つ生体物質で、かつ枯渇により様々な弊害が出てくるものと言えばグルタチオンが有名である。
www.ninchi-shou.com
抗酸化作用を有する物質を補充して症状が改善するということは、酸化がいかに身体にダメージを与えているかということの証左でもある。
ちなみに、人為的に摂取するもので酸化作用が強いのはタバコである。
プラズマローゲンは、どのように認知症を改善させる?
- 抗炎症作用、抗酸化作用
- 神経細胞を新生させる
- シナプス・神経細胞機能の増強
- アミロイドβの蓄積を抑制
このような作用を通じて、学習や記憶機能を向上させる働きが期待されているようだ。「プラズマローゲンを投与されたハツカネズミにおいて、サイトカイン産生を伴うグリア細胞の活性化とアミロイドβの蓄積が著しく減少した」という論文がある。*1
治療と予防、両方への適応が可能な印象。
実際の患者さんへの効果は?お値段やフェルガードとの比較
自分が外来で確認出来たプラズマローゲンを使用している患者さんは、これまでのところ3名。
一名は、「頭が冴えるようになった」と自覚的な改善効果を話し、またご家族も「鈍かった反応が素早くなり、自発性が出てきた」と仰っていた。この方はアルツハイマー型認知症。
別の一名は、「3ヶ月ほど使ってみたけど、特に変わりはなかったです」とご家族からのお話が聞けた。この方もアルツハイマー型認知症。
最後の一名は、「飲んですぐに頭が変な感じになったので止めた」とのことであった。この方は軽度認知機能障害(MCI)であった。
たった3名なので、自分の評価としては今のところなんとも言えない。
ただ、効いたという一名はご本人もご家族も非常に嬉しそうに改善の実感を話していたのは印象的であった。
値段だが、プラズマローゲンの研究開発を行ったレオロジー機能食品研究所で確認すると、12960円/月のようだ。
プラズマローゲン | 製品化事例 | レオロジー機能食品研究所
ちなみにフェルガード100Mは5500~6000円/月、フェルガードLAは8000~9000円/月。
株式会社グロービア
プラズマローゲンにしろフェルガードにしろ、栄養補助食品(機能性食品)であり薬剤ではない。よって、値段はあくまでも「メーカーが提案する一日当たりの推奨摂取量」を元にした設定である。
二重盲検試験が2016年春頃に終了予定
400名を対象とした二重盲検試験が、今年の春頃には終了するらしい。プラズマローゲンの効果については、その解析結果が待たれるところ。
抗認知症薬を用いない認知症治療の、選択肢の一つとなって欲しい。
(2016年12月4日 追記)
九州大学などの研究チームが行った臨床研究では、「プラズマローゲンは効果あり」とのこと。
認知症改善に脂質摂取が効く 臨床試験で九大チーム確認 - 産経WEST
藤野 武彦 馬渡 志郎 片渕 俊彦
ブックマン社 (2015-09-30)
売り上げランキング: 148,804