変性疾患の治療にグルタチオンを用いるようになって5年ほど経った。
試行錯誤を続けているが、今の点滴療法の一端を御紹介する。
グルタチオン点滴療法の適応
グルタチオン(Glutathione, GSH, Glutathione-SH)は、3つのアミノ酸(グルタミン酸、システイン、グリシン)から成るトリペプチドである。通常はあまり見られないシステインのアミノ基とグルタミン酸の側鎖側のカルボキシ基との間にアミド結合を有する。抗酸化物質の1つであるグルタチオンは、フリーラジカルや過酸化物といった活性酸素種から細胞を保護する補助的役割を有する。
~中略~
グルタチオンの生理的機能は多々あるが、主要な機能は大きく2つに分けることができる。
ひとつは細胞内のチオール環境を維持することである。チオールは生体内の主要な抗酸化成分である。グルタチオンは自らのチオール基を用いて過酸化物や活性酸素種を還元して消去する。また、タンパク質中のジスルフィド結合を還元して2つのチオール基に戻す。更に、グルタチオンは細胞のシステイン源でもあり、システインはチオール基を含む。
もうひとつの主要な生理機能は、様々な毒物・薬物・伝達物質等を細胞外に排出することである。グルタチオンはこれらの物質を、やはりシステイン残基のチオール基に結合させ(グルタチオン抱合)、自ら細胞外に排出されることで、細胞を解毒する。
(Wikipediaより引用。赤文字強調は筆者による。)
活性酸素消去と解毒がグルタチオン点滴の狙いとなる。自由診療(保険外)で行っており、適応は以下となる。
- パーキンソン病(PD)
- レビー小体型認知症(DLB)
- 進行性核上性麻痺(PSP)
- 大脳皮質基底核変性症(CBD)
- 多系統萎縮症(MSA)
- アルツハイマー型認知症が進行し、パーキンソニズムが加わってきた方
- 精神系薬剤他剤併用状態の解除が急いで必要な方
患者さんに点滴療法の意義を説明し同意を得た後、初回量として生食50mlにグルタチオン1600mgを溶解して15分で滴下している。
自覚的他覚的変化がなければ400mgずつ増量していくが、2800mgまで増量して変化がなければ一旦2400mgに戻してリポアラン(αリポ酸)を加える。リポアランの開始量は50mgで、維持量は100~200mg。
基本となるのはグルタチオン+リポアラン。
あとは、患者さん毎に
- 痙性の強い場合はノイロトロピンを3U~12U
- 覚醒不良時にシチコリンを250mg~2250mg
- 小脳萎縮が強い場合はソルコセリルを4mg~12mg
- 糖質制限者にエントミン(L-カルニチン)を400mg
- 易疲労性があればアリナミンFを100mg~300mg
などを加えている。
リポアランを併用するようになって、グルタチオン点滴の効果を実感出来る人が増えたように感じている。それでも、打率8割の世界にはまだまだ遠いが。
ちなみに、
「なんで同じグルタチオン点滴なのに、先生のところでは効くんだろうね?他の病院で何回も受けたけれども、全然効かなかったのに。」
と教えてくれる患者さんがたまにいるが、それは恐らく800mgの固定打ちだったのではないか。 それだと効かなくても不思議ではない。美容目的ならいざ知らず、変性疾患対策で800mgは少なすぎる。
治癒を目標と出来ない難病に取り組む際に重視しているのは、初期の効果実感と治療の継続性である。
幾ら良い治療でも、料金が高すぎたら続けられない。治療の継続性を重視するなら、費用の問題を避けて通ることは出来ない。
経営者としては悩ましいところだが、”医師としての倫理観”を意識しながら、変性疾患の自由診療料金を設定している。
www.ninchi-shou.com
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