先日、診察中に警察から電話があった。
何事かと思いながら対応したところ、以下の様な話を聞くことが出来た。
地元の警察宛に情報提供書を郵送
前頭側頭型認知症(≒ピック病)で、以前ブログで紹介したことがあるDTさん。
www.ninchi-shou.com
免許取り消し後の混乱に備えて、それまで30mg/dayで内服していたウインタミンを50mg/dayに増量。
また、地元の警察に以下の様な情報提供書(陳情書?)を送り、備えてもらうことにした。
この度、〇〇様が免許取り消しになると奥様から伺いました。私は、〇〇様の認知症診断書を書いた医師です。
今後、「何故自分が車に乗れないのか?」と〇〇様が不穏になることが予想されます。我々としては、ご本人が来院出来るのであればその都度説明致しますが、一回の説明で納得されることは、まずありません。複数回同じことを説明し続け、そのうち車のことを忘れていくのを待つしかありません。
警察におかれましては、「〇〇という理由で乗れなくなったんだよ」ということを、認知症ということは前面に出さずに〇〇様に説明して頂けませんでしょうか?認知症の方に、「あなたは認知症だから運転出来ない」と説明しても、理解して頂くことは不可能です。
例えば、「テストの点数が低いから、免許試験に落ちたんだよね」といった説明が可能でしたら、是非お願いいたしたく思います。また、複数回にわたって〇〇様が訪ねてこられたときにも、お手数かとは思いますが、その都度付き合って頂けましたら大変ありがたく思います。
ご高配頂けますよう、宜しくお願い申し上げます。
免許取り消しは無事に終えたが・・・
連絡を受けたDTさんと奥さんは警察署に出向き、その場で免許は取り消しになった。抵抗は全くなく、素直に応じたとのことであった。
しかしその後、自宅に戻ったDTさんは車で出かけてしまった。
慌てた奥さんは警察に連絡。
警察が手配した検問に引っかかったDTさんは、「何で車に乗っちゃったの?」という警官の問いに対して、「さっき警察に免許を返したから、そのことを友人に伝えようと思って。」と答えたらしい。
通常なら、このような返答を受けた警官は困惑するだろう。
しかし、前もって当方から送った情報提供書の内容が警察署内で共有されていたようで、対応した警官が無理のない説明と誘導を心がけた結果、DTさんは大きな混乱なく従ってくれたそう。
「事前にご一報頂いたことで、スムーズに対応出来ました。ありがとうございました。」と、電話口で感謝の念を伝えられた。
取り消し後の混乱が事前に予測できる方には、今後も警察宛に情報提供書を送ることで柔軟な対応をお願いすることにした。