鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

読書について。

 ライフワークは読書です(唐突)。

 

小学生の頃は、自宅に転がっていた森村誠一や江戸川乱歩といったミステリーをよく読んでいた。

その後、「雨月物語」や「太平記」、「春秋左氏伝」や「史記」、「水滸伝」や「三国志」といった和漢の古典を繰り返し繰り返し読み、文天祥の「正気の歌」に心を震わせるような中学高校時代を送った。*1

 

それなりの著作数がある日本人作家でcompleteしているのは陳舜臣、司馬遼太郎、遠藤周作、塩野七生など。

 

思想的には、福田恆存、エドマンド・バークやJ・M・ケインズ*2などに影響を受けており、立ち位置(態度)は保守だと思う。ただし、近年の保守と言われている政治家や言論人、その支持層には何のシンパシーも感じていない。

 

西洋文学は、背景に分厚いキリスト教の壁を感じるような大作は苦手。教養のつもりで読んだヘッセやスタンダールは面白かったが、ドストエフスキーには圧倒されて終わった。

 

ただし、キリスト教を経る前の古代ギリシアやローマの著述、例えばプラトンやセネカ、マルクス・アウレリウスなどは好んで読む。

 

特に、カエサルの「ガリア戦記」は墓場にもっていきたい一冊である。

 

ガリア戦記 (岩波文庫 青407-1)
カエサル
岩波書店
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基本的な読書の傾向としては、政治や歴史、経済に偏重している。

 

たまに読む良質のSFは、想像力の幅を拡げてくれる

 

医者になってからは、仕事に関連する書籍を読む比率が増えた。仕方のないことではある。

 

これは快適な読書人生という意味ではちょっとした不満なのだが、このちょっとした不満は、たまに読むSFが解消してくれるので今のところ助かっている。

 

素晴らしいSFを読み終えた後のカタルシスは、他のジャンルで得られる読後感とは別次元のものである。

 

個人的なSFベスト3を順不同で以下に挙げてみる。

 

 

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)
クラーク
光文社
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星を継ぐもの (創元SF文庫)
ジェイムズ・P・ホーガン
東京創元社
売り上げランキング: 1,018
ファウンデーション ―銀河帝国興亡史〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)
アイザック・アシモフ
早川書房
売り上げランキング: 64,451
 

 

 

クラークもホーガンもアシモフも、既にこの世にはいない。しかし、作品はいつまでも色あせない。

 

「幼年期の終わり」のラストで感じる、なんとも言えない心地よい無力感。

 

「星を継ぐもの」の、緻密な設定と伏線回収の妙。

 

ファウンデーション初期3部作が持つ躍動感、そして30年の時を経て再開となった後期シリーズに投影された、作者アシモフが経てきた人生の陰影。

 

いずれの読書体験も自分にとって貴重な財産となっていて、今でも時に手にとって眺める。*3

 

良く出来た私小説を呼んだ後は、誰かの人生に迷い込んだような感覚を覚える。しかし、良質のSFを読んだ後は、自分に何かが加わり、自分の幅が拡がったような感覚になる。

 

今の自分は、私小説のそれよりも、SFの読後感を好んでいるように感じている。

 

*1:同時に、Hard RockやHeavy Metal中心に音楽にもドハマリしていた。

*2:ケインズ経済学の背景には、分厚い哲学的思想があると思う。

*3:通して複数回読んできたので、今後の可処分時間のことを考えると、再度通読することは恐らくない。今は「眺める」だけで読んでいた当時のことを想い出したりしながら楽しんでいる。