LPCとは?
レビー小体型認知症と前頭側頭葉変性症、両方の要素をもつ認知症患者さんに対して、2012年9月に河野医師が提唱した疾患概念のことである。
- ピックスコア4点以上
- レビースコア3点以上
- 前頭側頭葉変性症の画像所見
上記3点を満たす場合、LPCと考えて処方に工夫を凝らす。ピック病(前頭側頭葉変性症のひとつ)よりであればピックセット、レビー小体型認知症よりであればレビーセット、という風に。
- ピックセット・・・ウインタミン+フェルガード100M
- レビーセット・・・リバスチグミン+抑肝散+メネシット
今回提示するのは、「典型的なLPCかな?」と思えたお一方。
77歳男性 レビー・ピック複合(LPC)
初診時
物忘れ、人が変わったかのように激怒する、話の辻褄が合わないなどで、長男さんと相談員と来院された。
- 表情はやや呆然、強制笑のような感じ
- ビックリ眼
- 麻痺なし
- 歩行は小刻みでゆっくり
- 右上肢にわずかにrigid
- 二度童、ふざけた投げやりな返答
- カルテを指差し触ろうとする?
- 帯続言語
- HDS-R9点
- 復唱は明らかにふざけて途中でやめる
- 立方体模写x
- 時計描画x
- ピックスコア9.5
- レビースコア5
頭部CTは右側頭葉優位に萎縮。LPCと考える。
フェルガード100Mを勧めた。レミニール4mgとウインタミン4mg-6mgで介入開始。
1ヶ月後
ウインタミンは飲めている。しかし、レミニールその他の薬は紛失。フェルガードは金銭的に厳しいとのことで飲んでいない。同居の息子さんの協力は、全く得られていないようだ。
かかりつけを一旦他院から当院に。呆然とした表情は、前回よりやや和らいでいるかな。足取りは介助なしでしっかり。
4ヶ月後
前回以降受診なく、時折病院周囲を歩いているところを見かける。
歩行はまずまずしっかりしている。スーパーの袋を持って歩いているので、ADLはある程度自立しているのかな。
(引用終了)
ウインタミンを開始して1ヶ月で表情の変化が確認出来ただけに、その後をフォローしきれなかったことは残念。
認知症診療を継続していくにあたって必要なのは
- 家族のバックアップ
- 介護保険などを利用した、ケアによるバックアップ
- 医療(投薬を含む)のバックアップ
当たり前だが家族の協力はとても大事。
コウノメソッドにおける家庭天秤法(抑制系の薬の分量を、家族判断で自宅調整してもらうこと)では、この家族の協力が大前提となっている。
しかし、上記3点がしっかりそろった状態で認知症に取り組めないケースは多々ある。そういう場合は、投薬の初期開始量が重要。初回でつまづくと、後々大変。
副作用で痛い目をみる可能性が低く、かつ著効例が出やすい量として、ピックセットにおけるウインタミン朝4mg夕6mgという量設定は、なかなか絶妙である。
便利なLPCの概念、重要な家族協力
初診時でDLB(レビー小体型認知症)かFTLD(前頭側頭葉変性症)か判断が悩ましい場合、その時点ではザックリとLPCと考えておき、どちらの成分が強いのか、症状に応じて対応していく。また、初診時の診断がDLBでも、徐々にFTLDの要素を感じるようになってきた時に、
「あ、LPC化してきたのか(この場合はピック化か)」
と考える。
以前「NPH+α」でも取り上げたが、
別の認知症疾患を合併してくる可能性について、外来では常に敏感になっておく必要がある。
しかし、月に一回、もしくは2ヶ月に一回の外来での診察時間内に、医師が診察で得られる情報には限界がある。そこで重要なのが、「家庭での状況」を家族から聴取することである。これに勝る情報は、そうそうない。
やはり家族の協力は大前提なのである。