アルツハイマー型認知症は近年、「第3の糖尿病」と呼ばれるようになった。
糖尿病の分類
1型糖尿病
インスリンを分泌する膵臓β細胞が何らかの原因で破壊され、インスリンを分泌できなくなった状態のこと。この「何らかの原因」として考えられているのは、自己免疫の関与(免疫が自らの身体を攻撃してしまうこと)。
インスリンを自分で分泌できないため、殆どの場合において注射で補う必要がある。
2型糖尿病
糖尿病全体の約9割を占めると言われる2型糖尿病。遺伝的素因と生活習慣が絡み合って発症する、いわゆる「生活習慣病」の位置づけである。
3型糖尿病
アルツハイマー型認知症を3型糖尿病と呼ぶようになったのは、糖質の過剰摂取により
- 糖質の過剰摂取により脳内血管が常に高血糖となると、インスリンが常に出ている状態(高インスリン血症)になる。
- そうすると、過剰なインスリンを分解する酵素が多く消費されることになる。
- インスリンを分解する酵素(ネプリライシン)は、その蓄積がアルツハイマー型認知症の原因の一つと言われているアミロイドβを分解する酵素でもある。
- つまり、高血糖高インスリン状態だと、アミロイドβの分解が後回しにされてしまい(インスリンが優先的に分解される)、アルツハイマー型認知症発症に繋がってしまう。
このようなことが脳内で起きていることが分かったからである。
高血糖高インスリン状態が続くと、神経細胞がエネルギー源として上手にグルコースを利用できなくなる。すると脳が正常に働きにくくなり、認知症が進行していくという悪循環に陥っていく。
この、「グルコースが上手く使えなくなる」理由として、
長年高インスリンが続いた結果、血液脳関門(脳への化学物質流入を厳重に取り締まるバリア)がインスリンの脳内への流入を制限するようになり、その結果神経細胞がインスリンを利用してグルコースを取り込むことが出来なくなる
とか
慢性の高インスリン血症は、神経細胞内へのインスリンのシグナル伝導の進行を抑制し、細胞のインスリン利用を障害、結果、神経細胞の糖利用を障害する
といった機序が考えられている。
糖尿病≒インスリンをうまく使えない状態のこと
以下のように考えると、分かりやすいと思う。
- 1型糖尿病は、使いたくても使えるインスリンが無い状態。
- 2型糖尿病は、インスリンの分泌が悪かったり(分泌能低下)、インスリンへの感受性が低下したり(インスリン抵抗性増大)などで、結果的にインスリンを上手く使えない状態。
- 3型糖尿病(アルツハイマー型認知症)は、神経細胞がうまくインスリンを使えない状態。
アルツハイマー型認知症の治療では、インスリン点鼻療法が期待されているが、保険適応の話はまだ聞かない。
また、ココナッツオイルがアルツハイマー型認知症に効果があるとされるのは、
グルコースをうまく利用できなくなった神経細胞に、血液脳関門を突破できるケトン体を利用して貰う
このような理由が考えられる。
自己免疫が関与する1型糖尿病は予防困難であろうが、生活習慣病である2型糖尿病、そしてその延長線上にあるアルツハイマー型認知症は、日常生活に注意することで相当程度にリスクを下げることは可能と考えている。
日常生活の注意とは、「過剰な糖質摂取(精製穀物含む)を慎むこと」であり、それは即ち「糖質制限」のことである。
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