今回紹介するのは、高血圧症・2型糖尿病・脂質異常症・不安神経症・不眠症・胃食道逆流症(GERD)の診断で、10年ほど内服治療をされていた60代男性。退職を機に当院にかかりつけ医を変更したいとのご希望で来院された。
これまでの食生活は至って"普通"。ラーメンが好きというのも、B級グルメが大人気の昨今、取り立てて特別ということもない。どこにでもいるであろう、60代の男性だった。
当方がお勧めしたのは、
- 適度な散歩
- 夕食だけ主食を抜く"プチ"糖質制限(オカズは増やすように)
この2点。さて、どのような経過を辿っただろうか。
60代男性 運動とプチ糖質制限で・・・
初診時
10年来、複数の薬を内服中。退職するにあたって当院へのかかりつけ変更をご希望。
2ヶ月前のHbA1cは6.1。夕食のみの糖質制限で、PPIその他の薬の減量卒業を目指していきましょう。少しトロンとした印象だが、デパスの影響?
1ヶ月後
- 血色素量(HB):15.0g/dl
- ヘマトクリット:43.9%
- MCV:86.9fl
- HbA1c(NGSP):6.2%
- AST(GOT):28IU/l
- ALT(GPT):34IU/l
- γ-GTP:49IU/l
- 中性脂肪(TG): 185mg/dl
- HDL-CHO:40.8mg/dl
- 尿素窒素:19.9mg/dl
- クレアチニン: 1.14mg/dl
- 血清鉄(Fe):62μg/dl
- 血糖: 116mg/dl
- LDL-CHO:136mg/dl
- フェリチン定量:153.2ng/ml
脂肪肝は今までも指摘されていると。MCV86は、脂肪肝による軽度炎症の影響か。
TGはさほど高くなく、フィブラートは一旦中止してみる。夕食のみのプチ制限を開始している。体感の変化はまだなし。
自宅血圧測定の徹底を。次回はトリアゾラムを減量してみる。
1ヶ月後
- 自宅血圧安定、カムシアHDはLDに減量
- BW69kgで横ばい
- 睡眠は4~5時間に昼寝1時間
- プチ糖質制限継続中
トリアゾラムは中止、デパス2T2Xのうち、1Tを眠前に回す。GERD症状なく、PPI(胃酸を抑える薬)も中止する。
次回は採血と頚部エコーを。
1ヶ月後
頚部エコーでIMT肥厚なし、分岐部狭窄なし、SCAに1.6mmプラークのみ。
トリアゾラム中止で問題なし、デパスも夜だけでいいと。
GERDは再燃したとのことで、PPI再開。
1ヶ月後
- HbA1c(NGSP):5.9%
- 中性脂肪(TG): 161mg/dl
順調な経過。カムシアLDはカンデサルタン8mgに減量。
次回、採血でHbA1cが低下していたらトラゼンタは終了とする。PPIはまだ継続。
朝食はプロテインを服用しつつ軽めに、昼は麺類、夕食は炭水化物抜きのオカズ中心で毎日1万歩の散歩。
1ヶ月後
体調良好。
毎日2時間ほど歩いていると。体重は68kgと前回から1kg減量。
プチ糖質制限実行中で夜間睡眠は5時間ほどで満足。
今回はTG、BS、HbA1cの採血。
初診から半年後
- HbA1c(NGSP):5.7%
- 中性脂肪(TG):126mg/dl
- 血糖: 115mg/dl
抜群の改善。特にお困り事なし。
トラゼンタは終了。3ヶ月後で採血再検。プロテイン活用を勧めた。
1ヶ月後
BP121/76
体調良好、お困り事なし。
2月から半年で5kgの減量。20代の頃は54~55kgだったと。今ぐらいがいいでしょう。
半年間で、血圧の薬は減量、糖尿病の薬は中止、脂質異常症の薬も中止、眠剤一部も中止できた。順調ですね。
(前医処方)
- トラゼンタ(5)1T1XM
- ラベプラゾール(10)1T1XA
- ベザフィブラートSR(200)1T1XA
- カムシアHD1T1XM
- エチゾラム(0.5)2T2XMA
- トリアゾラム(0.125)1T1X眠前
(最終処方)
- カンデサルタンOD(8)1T1XM
- ラベプラゾール(10)1T1XA
- エチゾラム(0.5)1T1X眠前
- 初診時血圧128/75
- 身長171cm
- 体重70kg
- 最終診察日血圧121/76
- 身長171cm
- 体重64.9kg
(引用終了)