2年8ヶ月の闘病の末、小林麻央さんが旅立った。
多くの人が彼女を応援し、回復への期待を抱きつつも、病状の悪化に心を傷めていたことと思う。自分もその一人であった。
彼女のBlogが開設された当初、しばらく読んでいた時期があった。
栄養療法を行っている身としては、彼女がどのような食事を摂っているのか気になっていたからである。
その後、Blogを読むことは止めた。ただ、SNSで流れてくる情報はチェックしていた。
生き方の選択
昨日のSNSのタイムラインは、彼女の訃報を伝える投稿で溢れていた。
その中で、
「糖質制限をしていないから、こういうことになったのだ」
「彼女は抗がん剤で殺されたのだ」
という投稿が目に留まり、悲しい想いを抱いた。
患者さんに選択肢を提示する立場である医師として、また、身内が患った際に、複数ある選択肢の中から一つを選んだことのある家族という立場で断言できるのは、
「彼女は進む道を選ぶ際に、悩まなかったはずはない」
ということだ。
「抗がん剤を使う・使わない」という選択肢を前に、彼女が悩まなかったはずはない。同様に、糖質制限のことを知らなかったという証拠もどこにもない。知ってはいたけれども、様々な理由で実行困難だっただけかもしれないし、糖質制限をしていたら助かっていたなどという保証もない。
上記の様な投稿をする人達は、「抗がん剤を使わず、糖質制限で癌を克服した」彼女を見たかったのだろうが、自分が見たい現実を見ることが出来なかった際にどのような態度を取るかで、その人が持つ奥行きは何となく見えてくる。
義憤を募らせているようでいて、実は単に自説の正しさを証明しようとしているに過ぎない彼ら彼女らの行為を、世間では「おためごかし」と呼ぶ。
「自分が信じる〇〇という方法をとっていたら、このようなことにはならなかったのだ!!」という声をあげるよりも、「自分が同じ状況に立たされたら、何をどう選択するだろうか?」という、いつか自分も辿るかもしれない道に想いを巡らせたい。
自分なら、血液のガンであれば抗がん剤を選択する。固形ガンであれば、手術可能な部位であれば積極的に手術を選択してガンのボリュームを減らす。その時点で転移していたら、抗がん剤を使用するかどうかは相当悩むだろう。抗がん剤の持つ作用(功罪)については、抗がん剤に対して陰謀論めいた確信を持つ人々よりも、理解しているつもりである。
いずれにせよ、ガンが発覚した時点で今よりも厳重な糖質制限に切り替えて、高濃度ビタミンCを始めることだけは決めている。あとは、その時の仕事状況や家族の意見なども聞いて決めようと思っている。
在りし日の、夫を見つめる一途な眼差し。そして、夫に最後に遺した「愛している」という言葉。
自分は彼女に「他にはない純粋さ」を感じていた。ただただ、涙しかない。
改めて、ご冥福をお祈り申し上げます。