うちの子どもが熱発したので、簡易インフルエンザ診断キットで調べてみたところ陽性であった。
その翌日に妻が発症し、更にその翌日に自分が発症するという、典型的な家族内感染となったのだが、幸いにも自分が罹患したタイミングは週末であったこともあり、仕事への影響は最小限に抑えられた(ハズ)。また、自分も妻子も回復のスピードは早かったのは不幸中の幸いであった。
39度の高熱はおよそ2年ぶりだったが、その時は副鼻腔炎だった。記憶を遡ったが、インフルエンザに罹ったのは今回が初めてだったかもしれない*1。
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ここ数年はビタミンCをとり続けていたこともあり、風邪らしい風邪をひくことすらなかったので油断していたのかもしれない。
患者さんと接する仕事である以上、一応ワクチン摂取を受けてはいた。しかしご存じの様にワクチンは確実な予防を約束するものではないし、また、言われているような症状緩和効果も自分にとっては何ら感じられなかった。
以下に、厚生労働省HPからのQ and Aを引用する。
Q.18: ワクチンの接種を受けたのに、インフルエンザにかかったことがあるのですが、ワクチンは効果があるのですか?
インフルエンザにかかる時はインフルエンザウイルスが口や鼻から体の中に入ってくることから始まります。体の中に入ったウイルスは次に細胞に侵入して増殖します。この状態を「感染」といいますが、ワクチンはこれを完全に抑える働きはありません。
ウイルスが増えると、数日の潜伏期間を経て、発熱やのどの痛み等のインフルエンザの症状が起こります。この状態を「発症」といいます。ワクチンには、この発症を抑える効果が一定程度認められています。
発症後、多くの方は1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院治療を必要とする方や死亡される方もいます。これをインフルエンザの「重症化」といいます。特に基礎疾患のある方や御高齢の方では重症化する可能性が高いと考えられています。ワクチンの最も大きな効果は、この重症化を予防する効果です。
※平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷齊(国立療養所三重病院))」の報告では、65歳以上の老人福祉施設・病院に入所している高齢者については34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています。
以上のように、インフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありませんが、ある程度の発病を阻止する効果があり、また、たとえかかっても症状が重くなることを阻止する効果があります。
ただし、この効果も100%ではないことに御留意ください。(下線部は筆者によるもの)
毎年変異していくウイルスを追い抜くようなワクチンが開発されたらいいのだが、技術的に厳しいだろう。
ちなみに、回復を早める、もしくは悪化させない工夫として自分が用いた手法が以下。
- 通常は4g/day程度のビタミンC摂取量を、10g~15g/day以上に増量
- 一回だけ、ビタミンC10g点滴を自分に施行
- ビタミンCを補強する狙いで、ビタミンE(d-α)を1200U/dayに増量
- 鼻粘膜修復目的で、ビタミンAを最大50000U/day内服
- 熱発中も高タンパク摂取を欠かさない
これらがどの程度効いたのかを正確に判断するのは難しい。
最終的には汗をかき始めて以降の回復が早かったことを考えると、早期で麻黄湯を内服することの重要性を再確認出来たとは言える。(今回はビタミン実験の目的があったので敢えて飲まなかった。)
「39度はしんどいなぁ・・・」と布団の中で想いながら同時に、「こんな熱の中、わざわざ診断を受けに病院に行くのはしんどいよなぁ・・・」とも考えた。
鼻の奥をぐりぐりは辛いので、鼻水(鼻汁)を利用しよう
インフルエンザをキットで診断する場合、スワブで鼻の奥をぐりぐりする「鼻腔拭い液採取法」を用いるのが一般的である。
鼻腔拭い液採取時の注意事項
- 検体採取の前に、まず、鼻腔孔から上咽頭の手前までの長さを決めます。年齢や顔の大きさなどにより異なりますが、適当な長さは、乳児は4cm、幼児4〜5cm、学童5〜6cm位です。スワブを持つときは、あらかじめこの長さの部分を持ち、その長さ以上先に入らないようにします。この持ち方はストッパ−の役目も兼ねています。
- スワブ挿入の際、あまりゆっくり挿入すると痛みが強い為、顔や首を動かすことがあります。位置と方向が決まったら所定の位置までは、一気に挿入することが大切です。
- スワブ挿入時は、スワブを回転させたり、捩ったりしないように注意してください。
- 被験者が暴れている時は、素早くスワブを持った手を離し、静止するまで待ってください。鼻粘膜を損傷し鼻出血を起原因になるので、決して無理にスワブを挿入しないでください。(こちらより引用。赤字強調は筆者によるもの)
「位置と方向が決まったら所定の位置までは、一気に挿入」とか、「被験者が暴れている時は、素早くスワブを持った手を離し、静止するまで待ってください」など、難易度が高い鼻拭い液採取法。される側は正直キツイ検査であるが、自分はこの方法にこだわってはいない。
(こちらより画像引用)
鼻汁が出る人であれば、ティッシュに出してもらった鼻汁にスワブを浸せばよい。娘の場合にもそのやり方を用いて、10秒もしないうちにA陽性の印が出た。
何も、"親の敵"のように鼻の奥をぐりぐりする必要はないのである。この方法は、特に小児にとっては有用だと思う。
飛沫感染症であるインフルエンザなので、ウイルスが活発に増殖していれば鼻腔内であろうが口腔内であろうが検出できる。また、熱発初期でインフルエンザウイルスが検出されないことなど幾らでもあるが、だからといって「インフルエンザではありませんね」と言えるわけではない。
抗インフルエンザ薬内服の必要性について
ちなみに自分は、インフルエンザの患者さんに対して抗インフルエンザ薬を処方することはあまりしない。
特に、小児に対して出すことはまずない。抗インフルエンザ薬の有名な注意事項である"異常行動"は、実際自分の周囲でチラホラと聞く。
高齢者の場合、基礎疾患や体力、その他施設入居の有無などを考慮して処方することはある。一般社会人であれば、会社を休める人なら「水分をしっかり摂って、家でゆっくり静養して下さい。」と説明する。休めない人やどうしても早く解熱させたいという希望の強い人には処方することはあるものの、それでも確実な早期解熱を約束できる薬という訳ではない。
タミフルやイナビルなどの作用機序を考えると、ノイラミニダーゼを阻害することで感染拡大防止に一定の効果があるようには思うが、その作用はあくまでもウイルスをそれ以上増殖させないものである。
症状の悪化を防ぐかもしれないが、ウイルスそのものを死滅させる訳ではない。感染のタイミングが不明だったり、熱の出始めが明らかではないインフルエンザであれば、抗インフルエンザ薬は飲まずに様子観察でもよいと思う。
およそ2、3日でインフルエンザウイルスの量はピークに達し、その後は減っていく。しっかりと休める環境が整っているのであれば、麻黄湯やビタミンCを摂取しながら自宅で静養すればよいし、まだ罹っていない同居の家族がいれば、予防的にビタミンCを数時間おきに内服しておくのはよいと思う。
インフルエンザ簡易診断キットを薬局で販売したらいいのに
周囲に感染者がいる。昨晩から39度近くの熱と、軽度の上気道症状や関節痛がある。インフルエンザを疑って病院を受診し待合室でしばらく待たされた後に、鼻の奥をぐりぐりされ「インフルエンザ陽性ですね」と言われ、抗インフルエンザ薬を貰って帰る。
会社や学校、保育園や幼稚園から、「休むのであれば、お医者さんからインフルエンザの診断を貰ってきて下さい」と言われることがある。
会社内や学級内に感染を拡大させることを懸念してのことだと思うのだが、病院の立場からするとインフルエンザの患者さん経由で「病院を受診する他の患者さん達に感染が拡大する」懸念がある。かといって受診を断るわけにもいかず、せめて入院患者へのお見舞いを制限するのが精一杯というところである。
病院から感染が拡大する可能性や、病院を受診した結果具合が悪くなる可能性については、もっと考慮されてしかるべできある。
会社や学校、幼稚園から「診断を受けてきて」と言われるからこそ、寒い中を無理して病院を受診して「やっぱりインフルエンザだね」と診断され家に帰った結果、受診前より具合が悪くなってしまう方は、意外に多いのではないだろうか。
余程の免疫低下を来してでもいない限り、インフルエンザといえども所詮は風邪なので薬など使わなくてもいずれ治る。よって、「治療」はさほど重要ではない。感染の拡大を抑えたいのであれば、出来るだけ早く「診断」して、他人との接触を最小限にすることが重要である。
インフルエンザ拡大防止のためには、
- 薬局で診断キットを買えるようにする
- 診断キットで陽性であれば、確実に仕事を休めるようにする
この2つの施策で十分なように思う。ワクチンはまあ、個々の判断ということで。
ついでに薬局で、麻黄湯とビタミンC、そして2日ほど食事が摂れなくなるかもしれない可能性を考慮して、経口補水液(OS1など)を4Lほど買って帰れば十分であろう。
自己診断が可能になれば、会社をサボるために診断キットを悪用しようと考える輩は出るだろうが*2、そのことを差し引いても、上記した策のメリットは大きいと思う。
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