グルタチオン点滴療法を始めて2年以上が経過した。
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著効例は相当数経験しているが、点滴内容はいつも試行錯誤である。グルタチオン1600mgで効果を認める人もいれば、2800mg必要な人もいる。そして当然だが、全く効かない人もいる。
「1200mgで効いたから、2000mgだともっと効く」ということはない。ただし、2000mgで効かなかった人が、3000mgで変化を見せることはある。ある程度は用量に規定されつつも、最終的にはその人が持つエネルギー代謝の特性に規定されると考えている。
糖質制限を併用できたら理想ではある。糖質制限で新たなAGEs(最終糖化産物)が産生されることを抑えることは即ち変性タンパク質産生を抑えることであり、症状進行抑制に繋がるはず。
そして、糖質制限により惹起された人為的ケトーシスは脳保護作用に繋がるだろうし、高脂質食、高タンパク食をサポートするビタミンB群やミネラルの補充で、グルタチオン点滴効果を更に高めることが出来ると考えている。
今回は、ビタミンB2を加えることでグルタチオン効果が延長されたと思われる女性を紹介する。
70代女性 パーキンソン病
(初診時)
知人の紹介。
- 7年来のPDの方
- 上肢にわずかにrigidあり
- 歩行はスムーズ
- 抗パ剤3剤内服中
グルタチオン点滴のご希望あり。初回は1400mgで開始。
直後の歩行はスムーズ。他覚的な変化は感じないが、自覚的には「少しいいかも」とのこと。
7年の経過のPDにしては状態が良い。一歩目が出にくいのがお悩みと。毎週打ってみましょうか。
ネオドパゾール3T3X
ミラペックスLA 1.5mg
トレリーフ25mg
3剤内服中。
1週後
以前は走ることが出来なかったが、今日は急いでいたので少し小走りをしてみたが、出来たと。今回はグルタチオン1600mgで。
以下、毎週の状況を列挙。
- いつもより足の震えが目立つ、とのこと。グルタチオン1800mgで。
- 「点滴効果持続時間は、2~3日かなぁ」と。ビタミンCを2gに増やしてみましょう。
- 今回から、フラビタン(ビタミンB2)を追加。まずは20mg。100mgまでは使ってみようかな。
- 前回フラビタン20mgで特に変化なし。今回は40mgで。点滴中の体熱感はなし。
- 「少しいいような・・・」と。今回はB2を60mg加える。
- 今回はB2を90mg。今のところ、目立って大きな変化はないようだ。90mgで変化がなければ、一旦B2は撤退。B5を試すかな。
- 効果持続時間は5~6日ほどだと。以前は1~2日だったようなので、B2追加の効果と考えていいのかな。90mgで継続。平均して5日持つのであれば、90以上を目指してみるかな。
- 月曜日ぐらいからいつも調子が落ちると。つまり、6日ほどは点滴が効いているということ。ご本人と相談し、B2を120mgに増量してみる。
- 自覚的には、B2 120mgは90mgよりも良い感じがあると。表情は明るい。点滴中はいつも当院書籍棚からチョイスした書籍を真剣に読んでいる。
ビタミンB2の考察
グルタチオン点滴療法とは、抗酸化療法である。
体内の酸化物質は複数存在するが、その一つであるヒドロキシラジカルを還元するのはグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)。また、GSH-Pxは過酸化脂質の還元にも用いられる。
GSH-Pxが対象を還元する際に補酵素として利用されるのが、ビタミンB2。また、GSH-Pxが働くには、還元型グルタチオンの存在が必要である。
つまり、「グルタチオンを点滴するということは、GSH-Pxをより効率的に働かせるということであり、GSH-Pxを効率的に働かせるにはビタミンB2が必要」という発想。
これまでにグルタチオン点滴療法に加えてきたビタミンB群は、B1、B2、B5、B6、B12。
その中で、はっきりと効果を確認出来たと感じたのがB2であった。B1やB5、B12もかなり使ってみたが、今のところはっきりとした効果の実感はない。B5については、恐らくNAC(N-acetylcysteine)併用下でないと意味がないのかもしれない。
B3(ナイアシン)がNADPHとして酸化型グルタチオンを還元型グルタチオンへ戻す働きを持つことを考えると、B3を加えることには意義がありそう。ただし、B3なのでナイアシンフラッシュがどの程度出るかには気をつける必要がある。
ビタミンCは、今のところ2g程度では目立った効果は実感出来ていない。ただし、糖質制限を併用出来たら、ビタミンB群にしろビタミンCにしろ、低用量でも高い効果を発揮できるようなイメージは持っているのだが。
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