鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

小脳萎縮について気になっていること。

 当院は脳神経外科なので、頭のCTを撮る機会が多い。 

CTで小脳が萎縮している人が結構多いことが、最近は気になっている。

70代女性 頭重感の相談で近医から紹介

 

パーキンソン病の夫の介護をしている方。

 

体格の良い夫の身体介護が大変だと。特に夜間の排泄の際に、夫を支えることがきついと。また、その都度起きなければいけないので不眠がちであると。

 

この方の頭部CTが以下。

 

小脳萎縮の頭部CT

 

明らかに小脳が萎縮している。

 

歩行はスムーズで歩隔も幅広ではない(小脳失調が目立つ方は足の間が幅広になりやすい)。タンデムゲイトも可能である。

 

しかし、椅子から立ち上がる際に一瞬フラッとしていた。聞くと

 

「最近どうもフラフラすることがあるのよね。困るほどではないけど。」

 

とのこと。

 

その他、指鼻試験はわずかに左が拙劣であった。排泄障害はなし。

 

そもそもの訴えと関係ないことを、どこまで説明すべきか?

 

この方が当院に来られたのは、「最近頭重感がある。頭の中は大丈夫だろうか?」という理由からである。

 

介護のストレスや不眠で頭重感が起きていると考えるのが普通だろうし、実際にそのように説明もした。

 

ここで常に悩むのが、「小脳萎縮のことについてどう説明したものか」ということである。

 

通常このような場合、症状が全く認められなければ敢えて説明はしないことが殆どである。それは、患者さんをむやみに不安にはさせたくないからである。

 

ただ、この方は

 

  • 起立時のフラツキ
  • わずかだが指鼻試験で左指が拙劣

 

という小脳失調を疑いたくなる症状を呈していたので

 

「ひょっとしたら、多系統萎縮症の初期症状なのでは?」

 

などと想像が拡がってしまった。

 

結局この方には

 

「頭重感は、肩こりや不眠、介護のストレスからくるものでしょう。日常生活を妨げるほど辛ければ、お薬を検討しましょう。また、頭の写真で一部気になるところがありましたので、もし万が一フラフラが酷くなったり、トイレのトラブルが増えてくるようなことがあれば、また声を掛けて下さいね。恐らくそのようなことはないと思いますが、念のためにお伝えしておきますね」

 

このように説明した。

 

ちょっと驚いた表情をされたが、その後にっこりと笑って

 

「その時には、また来ますね」

 

と仰って帰って行かれた。

 

今後会うことがなければ、それに越したことはない。果たしてどうであろうか。

 

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