鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

「先生、脇腹から白いモノが出てきたんだけど・・・」

 見た瞬間、しばし言葉を失いました・・・。

86歳女性 LPシャント術後

 

今回は、以前ブログで改善を報告したご姉妹のお姉さんのお話。ちなみに妹さんはアルツハイマー型認知症で、当方かかりつけである。

 

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特発性正常圧水頭症に対してLPシャント手術を行い、歩行や排泄、活気が大幅に改善。順調に経過していた。

 

LPシャント術後5ヶ月が経過した、ある日の外来で・・

 

患者「先生、脇腹から白いモノが出てきたんだけど・・・」

自分「ん?ちょっと見せてくださ・・・!!」

 

シャントチューブ感染

 

自分「・・コ、コレ、いつからですかね?(震え声)」

患者「2週間ぐらいかね〜?脇腹が痒くて、でも自分では手が届かないから、妹(アルツハイマー)に掻いてもらったの。そしたら妹が『姉ちゃん、何か白いモノが出てきたよ』って。」

自分「・・・・」

患者「痛くも痒くもないけどね〜。風呂にも普通に入っているよ?」

自分「・・・・」

 

結局シャント感染を起こし、チューブは抜去

 

その場で消毒し、皮膚縫合。抗生剤を処方した。

 

シャント手術後の傷

 

しかし残念ながら感染を起こし、後日シャントチューブを抜去することになった。

 

「恐らく、徐々に歩行困難と認知症悪化を来してくるだろうなぁ。その時に可能であれば、もう一度LPシャントを考えてみようかな?」

 

と覚悟していたのだが・・・

 

後日談

 

シャントチューブを抜去して9ヶ月が経過したが、絶好調をキープできている。

 

患者「遠い親戚があたしの財産を狙っているかもしれない。『おばちゃんも年をとったから、自分が財産を管理してあげる』と言っているの。あたしは弟に後見人になってもらっているから大丈夫なのに、失礼な話よね!」

自分「・・(以前よりもむしろしっかりしている・・)」

 

 

一旦皮下に形成されたチューブのルートに沿って、今でも髄液が流れ続けているのであろうか?ちなみに、頭部CTで脳室のサイズに変化はない。

 

薬剤調整の工夫はいつも通りに行っているのだが、それにしても不思議な話である。

 

まあ、元気でいてくれたら何だっていいのだが。

 

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