通勤途中、道行く小学生に「おはよう」と声をかけた。
怪訝そうにチラリとこちらを見た彼は、何も言わずに足早に去っていった。
まあ、そんなもんだろう。
「知らない人に声をかけられたら立ち去りなさい」と、学校や親から教えられているのかもしれない。
「次の痛み止めを飲むには、時間をどれだけ空けたらいいですか?」と、ある患者に聞かれた。
彼女はもう何年も毎日鎮痛剤を飲んでいる人なので、その質問にほとんど意味はない。薬物乱用頭痛に陥っていることと、乱用状態からの脱却法については大分前に伝えてある。
「6時間空けたら大丈夫」
彼女が望んでいるであろうその言葉は言わずに、ただジッと彼女を見つめた。彼女はそれ以上、何も言わなかった。
まあ、そんなもんだろう。自分と向き合うのは簡単なことではない。
「6回目のワクチン、いつ打てば良いですか?」と、ある患者に聞かれた。
打っては具合が悪くなることを繰り返している彼には、これまでに何度も「止めといた方がいいと思いますよ?」と伝えている。
まあ、そんなもんだろう。世の常だが、人は経験からすら中々学べない。
世間ではコロナとインフルエンザが同時流行していて、特に鹿児島は全国有数の流行地となっているなか、僕は毎日淡々と仕事をしている。
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熱発で内科や小児科に相談しても、受診を断られて当院(脳外科)に来る患者がいる。
「コロナの検査はしていませんよ?」と一応は説明するが、「それでもいいので・・・」とやって来る。
気の毒に。
診察を断る医者にはきっと、医師法に背かざるを得ないほどの事由があるのだろう。
気の毒に。
診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない(医師法19条1項)
熱発者の診察を断る正当な事由を僕は持っていないので、高熱と上気道症状の相談を受けたら取り敢えず診る。院内で採血し炎症反応を調べ、症状から肺炎を疑ったらCTで確認する。
肺炎が否定出来たら、あとは症状に基づいて漢方中心の対症療法を提供する。これで大体は良くなる。もちろん、病院に来るまでもなく自宅療養で改善している人の方が圧倒的に多いだろう。
感冒ウイルスに対する治療とはまあ、そんなもんである。自分で自分の免疫力を下げるような、余計なことをしないのが一番大事。
ダラダラとコロナは続き、真夏にインフルエンザが流行する国に日本はなってしまったけれど、専門家たちは「うがい・手洗い・消毒・換気・マスク・検査・ワクチンの徹底」を、今でも徹底的に呼びかけ続けている。
でもまあ、そんなもんだろう。平均的なエリートにとって自らの過ちを認めることは、自死に等しいことらしいから。
自分の頭で物事を考え結論を出し、その結果を自分の責任として引き受けることの難しさを想いながら、今日も僕は淡々と仕事をする。

もう何年も、こんな毎日を過ごしている。