鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

【症例報告】鉄タンパク欠乏の20代女性、めまいで受診。

 

今回紹介するのは海外の方。

 

20代の女性ZCさんは、2年前に海外から日本に学びに来た留学生である。ある朝、起床時にめまいを感じたとのことで、友人に伴われて当院を受診された。

 

鉄タンパク欠乏は、洋の東西を問わず、ある程度の先進国に共通する病態なのかもしれない。ただし、留学生ならではの事情として、ひょっとしたら書籍代や学費などを捻出するために食費を切り詰めてしまった結果、鉄タンパク欠乏をきたすということはあるかもしれない。お財布事情に首を突っ込むことはしたくないので、深くは訊かなかったが。

 

BUNが1桁で、かつトランスアミナーゼも軒並み低値の場合、フェリチンが低値であっても鉄剤処方は急がないようにしている。何故なら、そのようなケースでは鉄剤内服を先行させると胃もたれ便秘をきたすことが多いからである。

 

高たんぱく食のみでヘモグロビンが回復しフェリチンもじわっと上昇するケースはあるので、鉄剤はケースバイケースで考えるようにしている。

 

20代女性 質的栄養失調によるめまい

 

初診時

 

3年前に日本に留学してきた。

 

今朝6時頃、臥位で頭位変換時に回転性のめまいと嘔気を感じた。
今はふわふわする浮動性のめまいを感じるが、嘔気はない。

 

4~5年前に貧血を指摘されたことがあるも未治療とのこと。顔は真っ白で痩せている。
めまいは末梢性だろう。CT撮影や投薬のご希望はなく、栄養状態評価のため採血を行うことにした。

 

3日後

 

めまいは自然改善傾向とのこと。

 

(採血結果)

 

  • 血色素量(HB):13.9g/dl
  • MCV:90.5fl
  • 総ビリルビン:1.0mg/dl
  • 直接ビリルビン: 0.4mg/dl
  • AST(GOT): 10IU/l
  • ALT(GPT): 6IU/l
  • γ-GTP:9IU/l
  • 総 蛋 白: 6.6g/dl
  • 中性脂肪(TG):36mg/dl
  • HDL-CHO:50.7mg/dl
  • 尿素窒素:8.2mg/dl
  • 尿 酸:3.1mg/dl
  • LDL-CHO: 24mg/dl
  • フェリチン定量:19.8ng/ml
  • T S H:0.83uIU/ml
  • F-T3:3.4pg/ml
  • F-T4:1.17ng/dl

 

貧血を伴わない鉄欠乏に、病的タンパク欠乏、コレステロール欠乏。絶対的なカロリー不足もありそうだ。今朝の食事は、小さなパン1個と梨を一切れ。油でムカムカしてしまう。同伴の友人が言うには、「肉は一切れ食べるかどうか」とのこと。


「まずは卵を1日4個食べて、今後ボリューム一杯食べられるようにするための土台作りをしていきましょう。」と話すと、笑いながら聞いてくれた。

 

食事の工夫で様子観察。今は鉄剤を内服しても、胃もたれ便秘で継続不可だろう。ホットフラッシュ的顔面発汗は、超低コレステロール故の女性ホルモン減少によるものだろう。

 

朝はパン、ヨーグルト(時々)かケーキ。食べないことも多い。
昼は大学の食堂。チョイスするメニューは野菜炒め、味噌汁が多い。弁当を作っていくときは肉入り野菜炒め。


夜はコンビニ弁当が多いが、食べきれずに半分残すことが多い。
日本に来たのは2年前で、来日時の体重は47kgあったのが、今は43kg。
積極的に食べて頂くためのたんぱく質食材表を資料にてご説明した。(看護師〇〇記載)

 

(引用終了)

 


Skoglund Talk flickr photo by OIST (Okinawa Institute of Science and Technology) shared under a Creative Commons (BY) license

 

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