祖母の主治医となって、そろそろ一年が経過する。
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自分が主治医となってしばらくしてからの祖母の写真が下。
アルツハイマーでフォローされていたが、主治医変更に伴い診断は前頭側頭葉変性症(意味性認知症)に変更。アリセプトを中止にしたところ、易怒性は改善した。
初診時及び、以降の経過を記録より引用していく。
93歳女性 意味性認知症
(記録より引用開始)
初診時
(診察所見)
HDS-R:施行不可
遅延再生:0
立方体模写:不可
時計描画:不可
クリクトン尺度:34
保続:なし
取り繕い:あり
病識:?
迷子:なし
レビースコア:1.5
rigid:なし
ピックスコア:7.5
頭部CT左右差:あり
介護保険:要介護2
胃切除:なし
(診断)
ATD:
DLB:
FTLD:◎
MCI:
その他:
診察中は不安そうだが、笑顔を向けると困ったように少し笑う。語義失語が明瞭で、頭部CTで明らかに左優位な萎縮を認める。
ピックスコア7.5で、意味性認知症(SD)と考える。アリセプト3mgは既に休薬して5日間経過している。レミニール4mgに切り替える。
ジェイゾロフト50mgは漸減して終了に。
ストレスがかかると常同運動がでるが、普段のADLはまずまずで目立った易怒性はない。また、現在フェルガードLAを朝に2粒、フェルガードBを夕方に1P服用中。抑制系はひとまず使わずに経過をみてみる。
今後の課題はストレス軽減と、排泄のケア。
1ヶ月後
先週から熱発。近医で尿路感染の診断、クラビット開始。
熱は一旦落ち着くが、その後再度上昇。経口摂取や水分摂取はまずまず。
起居動作の緩慢さが目立つように。右膝関節はやや熱感腫脹あり。熱発も含めて偽痛風の可能性はあるか。
2ヶ月後
ヘルパー報告では、障子紙を破って食べたりしていると。異食と考える。
満腹感が無くなっているのか、食べ物はあるだけ食べてしまう。
ウインタミンを4mg/dayで開始。
3ヶ月後
経過中に熱発などあり、ウインタミンは一旦終了に。活気低下、傾眠傾向、食欲低下あり。
ニコリン1000mgとグルタチオン400mg投与。パーキンソニズムは目立たない。
胸を押さえる動作が目立つので、循環器を受診。狭心症の診断で内服提案あり、当院で処方することに。この頃の祖母の写真が下。
4ヶ月後
大分衰えあり。
貧血に対してフェロミア開始。BUNがわずかに上昇しているが、血便の有無は確認出来ない。
足背動脈触知不可。プロルベイン開始。レミニールと併用していたナウゼリンもパーキンソニズム対策の一環で中止に。
5ヶ月後
プロルベインで足背動脈は触れるようになった。収縮期で100前後の血圧。ニトロールは減量で。イルベタン(降圧薬)中止。全てつぶしで一包化に。
血圧低下傾向が続くようならドプスかメトリジン開始かな。
6ヶ月後
- 低血圧対策でドプス100mg開始
- 脳梗塞予防でプレタール50mg開始
- 変形性膝関節症対策でセレコックス
これらの対策後、軽介助歩行可能に。ひとまず穏やかではある。
右大転子部の褥瘡処置を行う。浸出液は多い。
8ヶ月後
易怒性はなく、落ち着いているようだ。しかし、排泄の問題が出てきている。トイレで排泄できずに、室内でしてしまう。弄便行為あり。
自力歩行困難。室内は膝行りで移動。
9ヶ月後
一過性に意識消失。その後数分で戻る。
救急車内では収縮期血圧68。当院到着時は収縮期120台でいつも通り。
自律神経発作による意識消失か。
MRIではDWIでわずかに右頭頂葉に梗塞を疑う所見有り。ただし、やや時間が経過した梗塞の印象である。麻痺はない。
環境変化によるストレスを考慮して、入院治療とはせず。
プレタールを100mg、ドプスを200mgに増量。採血でFe(鉄)12と低値。フェロミアを1.2g/dayに増量して経過観察。
11ヶ月後
下腿浮腫、膝関節炎症改善。にこにこ。
再び自力歩行が出来るようになってきた。褥創は治癒。
- セレコックス100mgに減量
- 便秘にマグミット
- 足背動脈触知可能
総じて好調になりつつある。病識も少し出てきたようだ。「足腰も弱くなって、年をとってしまったねぇ」など話す。
1年経過
現在2週間はショートステイ、2週間は自宅にて長女が介護。
自発的な排泄、皿洗いの手伝いなどをするようになり、庭の散歩もしているとのこと。
Feは12→42まで上昇。フェリチンは116、Hbは9.6。
活動性向上の原因としては、フェルガードLAの長期効果(髪が黒くなっている)やプロルベインの長期効果の可能性を、また鉄補充の効果も考える。
セレコックスは終了に。またフェロミア細粒も1.2g→1gに減量。
(引用終了)
まだまだ頑張れるかな
初診時の薬剤は以下の3種類であった。
- アバプロ50mg 1錠
- ドネペジルOD3mg 1錠
- ジェイゾロフト50mg 1錠
現在の処方内容は以下。
- フェロミア顆粒8.3% 1.0g
- シグマート錠5mg 1錠
- リスモダンR錠150mg 1錠
- ニトロール錠5mg 1錠
- レミニール錠4mg 1錠
- カルフィーナ錠0.5μg 1錠
- ドプス細粒20% 0.1g
- プレタール散20% 0.5g
全て朝食後。これに、フェルガードLA2粒とプロルベイン2カプセルも朝に飲んでいる。
薬剤の種類こそ3→8種類(サプリメントを含めると10種類)に増えているが、いずれもほぼ添付文書規定外の少量投与である。
90歳を超えて一旦下り坂になった場合、なかなか戻ってはきてくれない。復活できた要因は何であろうか?
元々祖母が持っている体力と、薬剤微調整の効果と、フェルガード+プロルベインの効果と、あと最大の要因は「介護」の力だと思う。
訪問ヘルパーさん達や、通所先のスタッフ、ケアマネさん、そして昔からの付き合いで何かと世話を焼いてくれるご近所さん。子育てで忙しくしながらも、祖母を気に掛けてくれる自分の妻、そして母(祖母からすると娘)の献身的な介護、全てに感謝です。
介護がどれだけ頑張っても、マズイ処方で台無しになるケースを多々見てきたので、それだけはするまいと注意している。
どれか一つ欠けてもバランスが崩れる綱渡のような状況ではあるが、もう少し頑張れる予感はある。