鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

「突然認知症みたいになってしまったんですけど・・・」というご相談があり、MRIを撮ってみたところ・・

 脳皮質下出血を起こしていた

 

先々週の日曜日に、突然表情がなくなってボーッとなりました。その後も、TVのリモコンの使い方が分からなくなったり、おかしな事を言ったり、まるで認知症になったみたいなんです・・・ 

 

このようなご相談があった。2週間様子をみていたが改善がないので受診した、とのこと。本人は茫洋とした表情で、病識(自分が何かおかしいという意識)はない。

75歳男性 脳皮質下出血

 

脳皮質下出血のMRI画像

初診時

 

(既往歴)

脳梗塞?大腸癌で手術歴あり

 

(現病歴)

先々週の日曜日に急に表情が変わった。以降、ボーッとして認知症のようだということで、心配した家族に伴われて来院。茫洋とした表情で病識なし。

 

(診察所見)

HDS-R:4
遅延再生:0
立方体模写:不可
時計描画:微妙
保続:あり
取り繕い:あり
病識:なし
迷子:なし
レビースコア:施行せず
rigid:なし
幻視:なし
ピックスコア:施行せず
歩行障害:なし
排尿障害:なし
易怒性:なし

 

頭部MRIで左後頭葉皮質下出血を認める。T2*ではMBsを多数認める。既に発症から2週間が経過しており、麻痺もないのでこのまま経過観察。かかりつけに情報提供。

 

急激な認知症発症を疑った際に考える、3つの疾患の可能性

 

急激に認知症のような症状が出現した際には

 

  1. 脳出血や脳梗塞の可能性
  2. 慢性硬膜下血腫の可能性
  3. レビー小体型認知症の可能性

 

この3つの可能性は考えたい。

麻痺を呈している際には1と2を疑うきっかけになり、幻覚をみているようであれば3を疑う。

 

脳卒中(脳出血や脳梗塞、くも膜下出血の総称)の場合、「Time is Brain」などと言われることもあるが、治療は時間との勝負なので(特に脳梗塞)早期受診を意識して欲しい。

 

今回の方は、麻痺を呈することがなかったために受診が遅れてしまったのだろう。麻痺の出ない脳卒中もある、という知識は重要である。

 

発症から2週間経過して急性期を過ぎてしまっているので、この時点で点滴を含め入院治療の必要性はほぼない。

 

病識のない状態で入院しても、環境変化の影響で落ち着きがなくなり、リハビリ効果は期待できない。むしろ状況を悪化させてしまう可能性がある。これは高齢者医療全般における共通の悩みでもある。

 

今後の予想される経過は?

 

脳を圧迫している血腫が吸収されていけば、今よりは覚醒状態も改善してくると思われる。その時点でレミニールなど試してみるのはいいかもしれない。

 

それより重要なのは再出血予防である。この方のMRIでは無数の微小出血痕がみられるので、今後再出血を起こすリスクは相当高い。

 

2型糖尿病で治療中ではあるが、内服はかなり適当とのこと。かかりつけ医には、今一度高血圧や脂質異常などの動脈硬化因子を精査して厳重なリスク管理をして頂くよう、お願いの情報提供書を作成した。

 

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