鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

ベイカー嚢胞とは。

70代女性 アルツハイマー型認知症

 

ある日の外来。

 

アルツハイマー型認知症で通院中の70代女性が、左膝を最近痛がるようになったとご家族から聞いた。

 

膝窩部に腫瘤を触れたのでCTを施行したところ、以下の様な画像が得られた。

 

ベイカー嚢胞のCT画像

ベイカー嚢胞のCT画像

 

自分は初めて経験したのだが、これは「ベイカー嚢胞(嚢腫)」、または膝窩嚢胞というものらしい。

 

ベーカー嚢胞(膝窩嚢胞[しっかのうほう])は、膝の裏側の関節包の延長部分に形成された関節液(滑液)で満たされた小さな袋です。

ベーカー嚢胞は、滑液がたまって、膝の裏側の関節包から袋状に突出した結果として生じます。滑液がたまる原因には、関節リウマチ、変形性関節症、膝の使いすぎなどがあります。ベーカー嚢胞があると、膝の裏側に不快感が起こります。この嚢胞は大きくなり下方に広がって、ふくらはぎの筋肉にまで広がることもあります。

嚢胞の中の滑液の量が急速に増えて内圧が高まると破裂することがあります。嚢胞から漏れ出た関節液によって周囲の組織が炎症を起こし、血栓性静脈炎に似た症状を起こすことがあります( 表在性血栓静脈炎を参照)。さらにベーカー嚢胞のふくらみや破裂したベーカー嚢胞が、膝の後ろを通っている膝窩静脈を圧迫するために、その静脈に血栓性静脈炎を引き起こします。(MSDマニュアル家庭版より引用)

 

 

生活に支障はないようだったので様子観察とした。1ヶ月後の外来でご家族に様子を伺うと、「特にあれから痛みが酷くなっていることはないようです」とのことであった。

 

認知症が相当進行している方なので、整形外科的治療を要することなく保存的に経過出来たらと願っている。