鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

認知症患者さんを診つつ、同時に主介護者への気配りをしつつ。

 

他院より紹介のあった方。その先生曰く、「奥さんもなんとなく危なっかしい感じなので、出来れば一緒に診て貰えたら」とのことだった。

 

80代男性 ATD?SD?

 

初診時

 

(既往歴)

 

右頸動脈ステント留置術後 高血圧症 プレタール内服中 無症候性脳出血

 

(現病歴)

 

上記既往あり。奥さんが物忘れを心配して紹介受診となった。

 

(診察所見)

 

HDS-R:17
遅延再生:0
立方体模写:OK
時計描画:OK
クリクトン尺度:2
保続:なし
取り繕い:軽度
病識:あり
迷子:なし
レビースコア:0
rigid:なし
ピックスコア:3
頭部CT左右差:なし
介護保険:なし
胃切除:なし

 

(診断)
ATD:△
DLB:
FTLD:△
MCI:
その他:

 

朗らかで愛想はよい。頭部画像では海馬や頭頂葉萎縮は目立たない。目立った左右差はない。ピックスコアは3だが、FTLDセット1/4を重視したい。聞き直しも多い。

 

SD>ATDで考えておく。活気はあり、易怒性はないと。レミニール4mg、ナウゼリンと併用で開始。ゆっくりと16mgぐらいまでの増量を目指してみるか。ちなみに、妻はピック感が漂っている。

 

1ヶ月後

 

変わりなし。
レミニール8mgに増量。

 

2ヶ月後

 

変わりなしとのこと。
次回HDSR再検するまでは、レミニールすえ置。

 

4ヶ月後

 

HDSR19/30
遅延再生3/6

 

初診から4ヶ月で2点アップ

このままレミニールは据え置きで経過をみる。

 

6ヶ月後

 

著変なく経過中。

 

今回でナウゼリンは卒業。

 

7ヶ月後

 

予定より早く来院。「誰かに付け狙われている」という妄想が出現し、警察が出動する騒ぎになったと。診察時も苦笑いをしながらではあるが、妄想について具体的に話をする。やや興奮気味で、血圧は160/95と普段より高い。

 

セレネース0.375mg/day開始。血圧手帳の記入をお願いした。

 

8ヶ月後

 

血圧は落ち着いた
また、妄想的言動も激減した

しばらくセレネースは0.375mgで継続。

10ヶ月後

 

妄想はほぼ消失。
セレネースは半年は使うかな。

デイサービスに奥さんが興味あり。
スタッフから説明を。

 

初診から一年後

 

妄想言動は全くみられず、落ち着いて過ごせている。

今回からセレネースを隔日投与に。

 

14ヶ月後

 

セレネース隔日投与でも妄想再燃なし。4日おきとする。

これでも妄想再燃がなければセレネースは終了に。

 

16ヶ月後

 

セレネースは完全に終了とする。

その他、著変なし。

 

18ヶ月後

 

キツネ、逆キツネ、グーパーOK
頭頂葉、前頭葉機能維持出来ているかな。

奥さん曰く、変わりなく落ち着いていますと。

20ヶ月後

 

状態が非常に落ち着いているので、他剤を処方してもらっている近医にレミニール8mgの処方を依頼しバトンタッチ。何かあったらまた来て下さいね。

 

(引用終了)

 

まくし立てる奥さんがストレス源にはなり得るが・・・

 

経過中に一時セレネースを必要としたが、無事終了まで持っていくことが出来た。良い状態でバトンタッチ出来たので一安心。向精神薬は、常に減らして止めるチャンスを窺っておくことが肝要。

 

主介護者の奥さんが「だからあたしがいつも〇〇って言うでしょう!?」「ちゃんとあたしの言うことを聞いてもらわないと困るのよ!」と外来でまくし立てる度に、ご本人の表情が硬くなるのは気になっていた。

 

ただしこれは、デイサービスが始まったことで奥さんの息抜きの時間が出来、以前よりマシにはなった。

 

主介護者がいなければ患者さんの生活は成り立たないため、認知症患者さんを診るということは即ち、主介護者もそれとなく診ておく(ケアしておく)ということでもある。

 

もし今後、奥さんに感じたピック感が具現化してきた場合には、奥さんへの本格介入が必要になるだろう。その日が来るのかどうか、それは誰にも分からないことだが。 

 

 

 

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